116話 ジョブの取得候補

 エルカの町から武の名地テツザンに向けて馬車で移動中だ。

 新たなミッションが追加されたので、念話を使って『悠久の風』のみんなと情報共有をしているところである。


「(へえ。ジョブを10種っていうのは、コウタっちの話か? 今何種類なんだ?)」


「(ええと……。7種だな)」


 風魔法使い、剣士、氷魔法使い、雷魔法使い、鍛冶師、料理人、火魔法使いだ。


「(それなら、あと3種類ですね! あてはあるのでしょうか?)」


 シルヴィがそう問う。


「(ふむ……。まずは、武の名地における鍛錬で『格闘家』の取得を目指そうと思う)」


 正攻法の鍛錬でも、数か月あれば取得できるだろう。

 しかし、できれば短縮したいところだ。

 『格闘家』の取得にも裏ワザはあるし、試してみよう。


「(コウタは『土魔法使い』の取得だけは失敗していたよね。あれも再チャレンジするの?)」


 ユヅキがそう問う。

 俺は各種の魔法使い系ジョブを順調に取得してきた。

 風、氷、雷、火は取得済みである。


 一方で、土魔法使いは未修得だ。

 ユヅキはエルカ草原で無事に取得できたが、俺はムリだった。

 土魔法使いの裏ワザじみた取得条件は、大地をその身で感じることである。

 しかし、なぜか女性と男性で必要な行為が若干異なるのだ。


「(テツザン近郊の地形次第だが……。『土魔法使い』の取得もいけるかもしれない)」


「(なら、『格闘家』と『土魔法使い』で2種類だな。あと1種類は何かあるのか? あたいにできることなら、何でもするぜ)」


「(もちろんわたしも何でもします!)」


 リンとシルヴィがそう言ってくれる。


「(ん? 今、何でもやるって言ったよね?)」


「(あ、はい。言いましたけど……)」


「(あんまりムチャはダメだぜ!)」


 シルヴィとリンが少し顔を赤らめながらそう言う。

 リンが言うムチャのラインは、相当高めだろう。

 料亭ハーゼでやった目隠しプレイも許容してくれたぐらいだしな。


「(そのときが来たら依頼しよう。とりあえずは、『格闘家』と『土魔法使い』の取得に挑戦するつもりだ)」


「(わかりました! わたしも、『格闘家』には興味があります!)」


「(あたいもだぜ。一時的にファーストジョブを変更してもらってもいいかもしれねえな)」


 リンがそう言う。

 彼女のファーストジョブは『料理人』で、セカンドジョブに『獣闘士』を設定している。

 せっかく武の名地で鍛錬するのであれば、ファーストジョブに『獣闘士』を設定しておくのはいい判断だろう。


「(わかった。そのあたりはおいおい考えよう。テツザンに着くのが楽しみだな)」


 俺たちは念話をそこで打ち切った。

 その後は、出現した魔物を軽く蹴散らしたり、ユーヤやアーノルドと他愛もない雑談をしつつ、馬車に揺られていった。

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