104話 攻守交代

 『火魔法使い』のジョブを取得するための試みは終了した。

 ミナからの鉄拳制裁をもらってしまったが、無事にジョブは取得できたし成功と言っていいだろう。

 俺は『ジョブ設定』スキルを用いて、ミナのジョブに『火魔法使い』を設定してみる。


「こ、これは……! なのです!」


 ミナが目を丸くする。

 頭の中に火魔法の呪文などが流れ込んできているはずだ。


「信じてくれたか?」


「信じるしかないのです。つくづく、コウタくんはとんでもないことばかりするのです」


 この世界において、魔法使い系統のジョブはやや取得が難しい。

 こういった謎理論で取得できるのは、確かにとんでもないことだろう。


「無事に習得できていてよかったよ」


 これでジョブが取得できていなければ、俺はただの性犯罪者である。

 俺とミナの仲なので問答無用で警吏に突き出されたりはしないだろうが……。

 しばらくは彼女から冷たい目で見られることになっていたはずだ。


「殴ってしまって申し訳ないのです」


 ミナがそう謝罪の言葉を口にする。

 彼女の剛腕から繰り出されたパンチは相当な威力だった。

 さすが、『鍛冶士』と『槌士』のジョブを伸ばしているだけはある。


「いや、説明不足のまま強行した俺にも非はある」


 そう、火魔法だけにね。


「ならせめて、ボクにできることなら何でも言ってほしいのです」


 ん?

 今何でもやるって言ったよね?


「くくく。何でもか……」


 ジリッ。

 俺はミナににじり寄る。


「ええっと。コウタくん? 少し顔が怖いのです」


「ぐへへ。なら、これをしてもらうぜ!」


 その後、すったもんだしながらジョブの取得に挑戦した。

 そして、最終的には俺も『火魔法使い』のジョブを取得することに成功した。

 メインに育てていくかは検討が必要だが、ジョブの選択肢としてあって困るものではない。

 今後の冒険者活動で、役に立つこともあるだろう。

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