93話 リンとミナからの資金提供
料亭ハーゼで打ち上げを行っているところだ。
シルヴィの購入代金の分割払いに少し困っているという話をしたところ、リンとミナが金を恵んでくれるという話になった。
「お、おお? ありがたいが、なぜだ? 相当な大金だろうに」
「何度も言っているけどよ。あたいがコンテストに入賞できたのは『悠久の風』のみんなのおかげだからな。特に、コウタっちの力には助けられてきた。理屈はまだよくわかっていねえが、ジョブのレベルアップ速度が半端じゃねえ」
リンは、コンテストに向けて練習していたリトルブラックタイガーの肉が品薄状態となり、困っていた。
そこで俺たち『悠久の風』とともにエルカ迷宮に狩りにいくことになり、肉を無事に手に入れることに成功したのだ。
「ボクも同意するのです。みんなには、本当に助けられたのです。あのままだと、契約不履行で借金を背負うところだったのです。それに、ボクの店の評判も落ちていたと思うのです」
ミナは、領主からの依頼でオリハルコンの武具をつくることになっていた。
しかし、彼女の失敗により材料の一部をダメにしてしまい、困っていた。
そこに俺たち『悠久の風』が手を差し伸べ、オリハルコンのドロップを狙ってエルカ迷宮に潜ることにしたのだ。
「そう言ってくれると、俺も嬉しい。リンとミナ、それにシルヴィとユヅキの力を結集した成果だな」
「わたしはご主人様のお手伝いをしただけですよ!」
「僕も……。僕は自分の食い扶持を稼ぐので精一杯だったし、人の困りごとまでは気が回らないよ。ミナさんやリンさんを手伝う選択をしたのは、コウタだ」
シルヴィとユヅキがそう言う。
「ふむ……。まあ俺も、自分の目的があったしな……。みんなの利が一致して、うまく連携できたといったところだな」
世の中、思いやりや愛だけで動いているのではない。
それぞれに思惑がある。
それらがうまく噛み合えば、最上の結果となる。
「なにはともあれ、あたいはコウタっちたちに感謝してるんだよ。分割払いが残っていて今後の支障が出るなら、あたいにその支払いを手伝わせてくれ」
「ボクも同じ思いなのです」
「わかった。ありがとう、2人とも。恩に着る」
ここまで言ってくれているなら、素直に甘えることにしよう。
「ありがとうございます!」
シルヴィが元気よくそう言う。
そして、食事がひと段落したときに、リンとミナからたくさんの金貨を受け取った。
ありがたく、分割払いの履行に使わせてもらうことにする。
この金は、リンとミナが俺に譲渡してくれたものだ。
しかし、できれば機を見て恩を返していきたいな。
俺のチートスキルを駆使すれば、今後もっと稼いでいくことはできるはず。
「さ、食事の続きをしようよ」
「おう。料理はまだ少しあるし、デザートもあるからな。楽しみにしていてくれよ!」
ユヅキの言葉を受けて、リンがそう言う。
おいしい料理を食べれば、気力も湧いてくる。
明日以降の活動も、がんばっていこう。
ちょうど、シルヴィの購入代金の分割払いの日が近づいてきている。
まだ全額返済には遠いが、ある程度まで残額は減っている。
『悠久の風』が得た資金のうち、俺とシルヴィの2人分を返済に充ててきたからな。
『パーティメンバー経験値ブースト』や『魔石蓄積ブースト』の恩恵により、俺たちの収入は右肩上がりだ。
その上、今回はミナとリンがくれた大量の金貨もある。
ざっくりと計算してみたところ、ちょうど分割払いを全て終えられるぐらいの額がある。
分割払いを済ませてしまって、身軽になりたいところだ。
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