68話 ゴーレム戦再び

 翌日。

 俺たち『悠久の風』は、エルカ迷宮の1階層ボス部屋手前の小部屋にまでやって来た。


「よし。みんな、準備はいいか?」


「問題ないのです」


「あたいもだいじょうぶだぜ!」


 ミナとリンがそう答える。

 シルヴィとユヅキも頷いている。


「まだ2回目だし、前回と同じ戦法でいくぞ。油断するなよ」


「承知しました!」


「安全策だね。前回よりもみんなのジョブレベルは上がっているし、間違いなく楽に早く倒せるだろうね」


 ユヅキがそう言う。

 そして、俺はボス部屋の扉を開く。


 この部屋は、2度目だ。

 相変わらず、なかなか広い部屋である。

 日本で言えば、小学校の体育館ぐらいだ。


「では、閉めますね!」


 シルヴィが扉を勢いよく閉める。


 ゴゴゴゴゴ!

 床に描かれている魔法陣が点滅し、振動する。

 土の塊が隆起し、人型に形成されていく。


 ゴーレムの体長は約2メートル。

 あまり大きくはない。

 階層ボスではあるが、まだ1階層だからな。


「ピピッ。侵入者を確認しました……。排除します」


 ゴーレムの瞳に光が宿る。

 無機質な目でこちらを捉え、戦闘の構えを取る。

 ここから先の戦闘は、前回と同じ流れだ。

 具体的にはーー。


「揺蕩う風の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。風の塊を撃ち出し、我が眼前の敵を弾き飛ばせ。エアバースト!」


「凍てつく氷の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。氷の弾丸を撃ち出し、我が眼前の敵を撃ち抜け。アイスショット!」


「母なる土の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。土の塊を生み出し、我が眼前に落とせ。クリエイト・ブロック!」


 まずは遠距離から魔法で攻撃していく。

 ゴーレムの動きはさほど速くないので、しばらくは好きに攻撃できる。


 単純に攻撃するだけならいずれは距離を詰められるが、俺の『エアバースト』には体をよろけせる効力もある。

 ゴーレムの速度は通常以上に遅くなっている。

 そのスキに、俺たちはガンガン攻撃していく。


「よし、だいぶ削れたな。シルヴィ、ユヅキ。残りのMPはどうだ?」


「わたしは、まだ半分以上残っていますよ!」


「僕は、半分を切ったぐらいかなあ」


 ふむ。

 前回は、同じぐらいのタイミングでもっと消耗していたように思う。

 やはり、ジョブレベルが向上してMPが伸びたおかげで、余裕ができたのだろう。


 前回のゴーレム戦の時のMPの評価値はいくつだったか。

 俺は各自のステータスを定期的にメモに残している。

 ストレージからメモを取り出せば思い出せるが、戦闘中にそこまでするほどでもない。


 確か……。

 ユヅキがE+++。

 シルヴィがD++。

 俺がC++だったような気がする。


 今は……。

 ユヅキがD+++。

 シルヴィがC++。

 俺がC++++だ。

 みんな、ひと回り以上成長している。


 今回のMP消費のペースなら、魔法だけで討伐するのも不可能ではなさそうか。

 安全第一にいくなら、それも悪くない。

 しかしその場合は、2戦目がキツくなる。

 もしくは、2戦目はせずにそのまま帰ることになる。

 それは少しもったいない。


「そろそろ近接に切り替えていくぞ! 成長した俺たちの力がどれほど通用するか、試しておかないとな」


「ボクのアクティブスキルをお見舞いするのです!」


「へへっ。あたいもがんばるぜ」


 ミナとリンがそう言う。

 ここから第2ラウンドが始まる。

 気を引き締めて戦っていこう。

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