51話 鍛冶を見学

 翌日になった。

 今日は、冒険者活動は休みとする。

 リンは、新作料理の研究。

 シルヴィとユヅキは、味見がてらそれを手伝うそうだ。


 ミナは、オリハルコンを使った武具の製作。

 俺は、その見学である。

 朝からミナの鍛冶場にやってきた。


「おはよう、ミナ」


「おはようなのです。コウタくん」


 俺たちはあいさつを交わす。

 いつもは汗だくのミナも、今日はさすがに汗だくになっていない。

 まだ鍛冶を始めていないからな。


「さっそくやっていくのです。今度こそ失敗できないので、集中するのです。コウタくんは、申し訳ないですが隅っこのほうで見ていてもらえますか?」


「ああ。もちろん邪魔はしないとも。隅でおとなしくしていよう」


 俺はそう言う。

 俺がここに来た目的は、大きく2つ。

 1つは、単純にミナとの交流を深めること。


 俺だけが使える『パーティメンバー設定』の力は、おそらくだが友好度が一定以上のものだけに及ぶ。

 今のところ、対象者はシルヴィとユヅキだけだ。


 条件を満たした者は、俺の画面内で名前が黒色で表記される。

 あまり友好を深めていない者は白色。

 そして、徐々に仲を深めつつある者は灰色である。

 冒険者の先輩であるアーノルドとレオン、それにユヅキの兄であるユーヤなどが灰色だ。

 だが、俺は彼らを新たなパーティメンバーの候補としては考えていない。


 アーノルドとレオンはいい人だが、冒険者歴が俺と違い過ぎる。

 経験豊かな先輩のもとで安全に活動するのもなくはないが、俺にはミッションがある。

 俺がパーティリーダーとなり、活動の方向性を主導していきたい。


 ユーヤは悪くはない。

 しかし、俺たち『悠久の風』とは別行動中だ。

 そもそも、男なので俺のハーレムパーティにはできれば入れたくない。

 それに、彼は『大地の轟き』のリーダーである。

 引き抜くのは避けたほうが無難だろう。


 というわけで、アーノルド、レオン、ユーヤ以外で、新たなパーティメンバーを2人探しているところなのである。

 その理由は、ミッションだ。



ミッション

『悠久の風』のパーティ人数を5人にせよ。

報酬:魔石蓄積ブースト、経験値(小)



 このミッションは、冒険者ギルドで登録できる名目上のパーティ人数を5人にするだけでは達成できなかった。

 『パーティメンバー設定』を用いる必要があるだろう。

 その候補者が、ミナとリンなのである。


 2人とも、日々の交流、狩り、エルカ迷宮への挑戦などを通して、順調に仲を深めている。

 『パーティメンバー設定』上の名前の表記も、2人とも灰色だ。

 特にミナは、黒に近い灰色である。

 もう一歩で、条件を満たしそうだ。


 俺はそんなことを考えながら、ミナの鍛治を見守る。


「せえぃっ! なのです!」


 彼女は元気よく武具をつくっている。

 何か友好が深まるような出来事は起きないかな。

 まあ、下手に邪魔をして嫌われてもマズい。

 しばらくは、宣言通りおとなしく見ていることにしょう。

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