39話 ユヅキの武具の新調
鍛冶師の少女ミナに、武具の新調を相談しているところだ。
「ふむ……。ずいぶんと使い古されているのです。大切に使ってきたようですが、そろそろ交換の時期だと思うのです」
「あー。やっぱりそうか……。お金がなくて、先延ばしにしていたんだよ……」
ユヅキがそう言う。
確かに、『大地の轟き』の5人でエルカ草原で活動しているようでは、お金は貯まらなかったことだろう。
今は『悠久の風』の3人で活動しているので、その分1人あたりの収入は増えている。
俺の各種チートによる恩恵もあることだしな。
「よし。まずはユヅキの武具を新調することにしようか。俺やシルヴィのほうは、また今度だな」
「承知しました!」
俺の案に、シルヴィが力強く同意する。
「ええ!? 僕の資金だけじゃ、新調するのに足りないんじゃ……」
ユヅキの懸念ももっともだ。
以前より収入が増えたとはいっても、彼女1人の貯金だけではまだ足りない。
「心配するな。パーティ資金から出してやる。俺たちは、同じパーティの仲間だろ? なあ、シルヴィ」
「そうですね! ユヅキさんも、偉大なるご主人様をともにお支えしましょう!」
ユヅキは臨時のパーティメンバーだ。
具体的な期限は定めていないものの、いずれは元のパーティに戻る予定である。
それを考えると、パーティ資金からあまり高価な武具をユヅキに買い与えることは避けたほうがいい。
しかし、ここは思い切って買うことにする。
ダンジョン攻略のためでもあるが、何よりもユヅキに恩を売るためだ。
高価な武具をパーティ資金から買ってもらった借りがあれば、元のパーティに戻りにくくなるだろう。
そうやって、何だかんだでずっと『悠久の風』にいてもらうのだ。
そして、ゆくゆくは俺のハーレムメンバーの1人に……。
「あ、ありがとう。コウタにシルヴィさん。僕、うれしいよ」
ユヅキが何やら感動したような表情でそう言う。
こう純粋に喜ばれると、良心が痛むな……。
ま、まあいい。
パーティ資金でメンバーの武具を新調するということ自体は、悪いことではない。
「ところで、予算はどれくらいなのです?」
「そうだな……。これぐらいでどうだ?」
俺はミナに予算を伝える。
「それなら、数打ちではなくてオーダーメイドでつくれるのです。コウタくんも、懐事情が温かくなってきたのです?」
「まあ、多少はな。今後、もっと稼いでいくつもりだ。今まで値切らせてもらっていた分、しっかりと還元させてもらおう。期待していてくれ」
「わかったのです。今後も末長くよろしくなのです」
駆け出しの頃は、いろいろとムチャな値引きをしてもらった。
今の俺やシルヴィがあるのは、ミナのおかげだと言っても過言ではない。
恩返しをしていかないとな。
「まずは今の武具をじっくり見せてもらうのです。あとは、今の筋力や体のサイズを測らせてもらって、細部を詰めていくのです」
「わかった」
ミナの言葉を受けて、ユヅキがそう答える。
「では、まずは防具を外させてもらうのです」
パチッ。
パチパチッ。
ミナが手際よくユヅキの防具の留め具を外していく。
「ちょ、ちょっと待って……。この防具の下は……」
ユヅキが顔を赤くして、何やら焦っている。
「? 何を躊躇しているのです? さっさと脱ぐのです」
ミナはそれに構わず、ユヅキの防具をどんどん脱がせていく。
そして、ユヅキの防具の下から現れたのはーー。
「わ、わわっ! コウタ、見ないで!」
ほほう。
防具の下は、かなりの薄着だったか。
キャミソールのようなものを着ている。
このあたりは、やや暑い。
鍛冶場が近いからな。
そんな環境下で、つい先ほどまで上に防具を着ていた。
そのため、ユヅキはかなりの汗をかいていたようだ。
キャミソールが汗を吸い込み、ぴっちりと肌に張り付いている。
胸のあたりに、小さくかわいい突起が……。
むほほ。
「み、見ないでって言ってるでしょ! コウタのバカーーーッ!!!」
バチーン!
ユヅキの平手打ちが俺を襲う。
「ぐはあっ!」
俺は店内で仰向けに倒れ込む。
「……配慮が足りずごめんなさいなのです。でも、コウタくんのスケベは相変わらずなのです」
ミナが呆れたような目で俺を見る。
彼女には、俺の女好きがバレてしまっているようだ。
「ご、ご主人様……。わたしに言ってくだされば、いつでも……」
シルヴィがくねくねしながらそう言う。
気持ちは嬉しいのだが、ルモンドへ分割払いを終えるまでは手を出すわけにはいかない。
……と、こんな感じで思わぬハプニングはあったが、武具の新調の件は概ね順調に進んだ。
1週間後ぐらいには、完成品ができあがるそうだ。
それまでは、既存の武具を使ってエルカ草原で堅実に狩りをしていくことにしよう。
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