30話 シルヴィの購入代金の分割払い

 シルヴィのファーストジョブに『氷魔法使い』を設定して、1週間ほどが経過した。

 ちなみに、俺も『氷魔法使い』を取得しておいた。


 シルヴィを言葉責めするのは興奮したが、彼女がガチ目に悲しそうな顔をしていたので、ジョブを取得できた時点で早々に切り上げた。

 彼女はMの気質はないようだ。


 ともあれ、この1週間は俺とシルヴィはエルカ草原でコツコツとレベル上げをした。

 最初はジョブレベルが上がりやすい。

 再びエルカ樹海や他の新しい狩場へ挑戦するにしても、ある程度レベリングをしてからのほうがいいだろうという判断だ。


 それに、今後の

活動費を安定して稼いでおく意味合いもある。

 前回のエルカ樹海への遠征では、クレイジーラビットやスメリーモンキーなどの魔石で結構稼げたが、ポーションの費用を差し引けば赤字だったからな。

 定期的にシルヴィの購入費の分割払いを行う必要もあるし、堅実な稼ぎは大切だ。


 まずは、俺とシルヴィの現状のステータスを確認しておこう。



コウタ

種族:人族

ファーストジョブ:風魔法使いレベル13

セカンドジョブ:剣士レベル11

サードジョブ:氷魔法使いレベル3

HP:E+++

MP:D++++

闘気:E+++

腕力:E++++

脚力:E++

器用:E+++


システムスキル:

ジョブ設定

経験値ブースト

パーティメンバー設定

パーティメンバー経験値ブースト


アクティブスキル:

ウインドカッター

エアバースト

ラッシュ

アイスショット


パッシブスキル:

腕力強化




シルヴィ

種族:白狼族

ファーストジョブ:獣戦士レベル8

セカンドジョブ:氷魔法使いレベル4

HP:E+

MP:E++

闘気:E++

腕力:E++

脚力:E++

器用:E+


アクティブスキル:

アイスショット

ビーストストライク



 俺もシルヴィも新たなスキルこそ取得していないものの、各ジョブレベルが上がり基礎ステータスが向上した。

 その影響もあり、エルカ草原での狩りの稼ぎも若干ながら向上している。

 まあ、ほぼホーンラビットやゴブリンなどの低級の魔物しか出ないので、どうしても限界はあるが。


 今日はルモンドの奴隷商館へ、シルヴィの購入代金の分割払いを行う日だ。

 俺とシルヴィで、奴隷商館の前までやってきた。


「さて……。今日は、この奴隷商館に用があるのだ」


「えっ……!? そ、そんな……」


 シルヴィが何やら青い顔をしている。

 いかん。

 奴隷商館は、彼女にとってあまりいい思い出のある場所ではないだろう。

 宿屋あたりで待機してもらうべきだったか。


「ご、ご主人様! わたし、何でもします! もっとがんばります! だから……捨てないでください!」


 シルヴィがそう叫ぶ。

 俺が懸念した事柄とは違った。

 しかし、事態はより深刻である。


「落ち着け。シルヴィを手放すつもりなどない。今日は単純に、分割払いのためにやって来たのだ」


 俺はそうシルヴィをなだめる。


「ほ、本当ですか……?」


「ああ、本当だとも。むしろ、嫌だと言っても手放すつもりはない。覚悟しておけ」


「は、はい! よろしくお願いします!」


 シルヴィが嬉しそうにそう言う。

 俺といっしょにいるのが嫌ではなさそうだな。


 とはいえ、彼女との信頼関係ももっと深めていく必要がある。

 俺が彼女を手放しかねないと思われていたのは、少し想定外だ。


 そんなことを考えながら、俺はシルヴィとともに奴隷商館の入口に向かう。

 いつもどおり、門番がいる。


「よう。店に入らせてもらってもいいか?」


「もちろんでございます。コウタ様、ようこそいらっしゃいました」


 門番がそう言って、俺とシルヴィを通す。

 俺とシルヴィの武器は、俺のストレージに収納済みだ。

 わざわざ奴隷商館に預ける必要はない。


 そして、俺は既にこの奴隷商館に顔パスである。

 分割払いとはいえ、高級品である奴隷を買ったのだ。

 この対応も当然と言える。

 日本で言えば、300万円の新車をローンで買ったようなイメージか。


 店員によって中を案内され、応接室に通される。

 しばらく待つ。

 そして、ルモンドが部屋に入ってきた。


「おお! コウタ殿。お元気そうで何よりです」


「ルモンドも元気そうだな。最近は護衛なしでの行商はやっていないのか?」


「ええ。前回で懲りましたからね。今は、腕利きの冒険者を雇っておりますよ」


 俺とルモンドは、そんな他愛のない話をする。

 そして、彼の視線がシルヴィに向く。


「ふむ……。シルヴィと会うのは、彼女をコウタ殿にお譲りしたとき以来ですな。それで、本日はどうして彼女を? 本日は分割払いのみのはずでしたが」


「彼女はとてもよくやってくれているのでな。満足を伝えるために連れてきたのだ」


「なるほど。確かに、彼女は以前はなかった自信を取り戻しつつあるようですね」


 ルモンドが感嘆した表情でそう言う。

 確かに、今のシルヴィはそこそこ堂々としている。

 最初の頃のように、おどおどとした感じはない。


「さて、本題に入ろう。これが、今日の分割払いの分の金貨だ。確かめてくれ」


 俺は、あらかじめストレージから出して小袋に入れておいた金貨を差し出す。

 ルモンドが中身を確認する。


「確かに、規定量の金貨のお支払いを確認しました」


 ルモンドがそう言う。

 彼が紙に何やら書き込み、俺に差し出す。


「こちらが受領証になっております。もちろんこちらでもお支払いの履歴は残しておりますが、念のためそちらでも保管してください」


「ああ。わかった」


 俺は受領証を受け取る。

 あとでストレージに入れておこう。

 そうすれば、なくすことはない。


「それにしても、コウタ殿は私の見込んだ通りのお方ですな。格安の前金でシルヴィをお譲りする決断をして正解でした」


「そう言ってくれるのはありがたいが、まだ気が早いのではないか?」


 俺はまだ、総額の10%も支払い終えていないのだが。


「いえ。噂は聞いていますよ。エルカ樹海で大活躍されたとか、日々のエルカ草原の狩りの成果が右肩上がりだとか。シルヴィも成長しているようですし、単独でエルカ樹海に行かれる日も近いかもしれませんね。もちろん、深入りするのは危険ですが」


 ルモンドがそう言う。

 彼は商人として、いろいろな情報を収集することに余念がない。

 俺やシルヴィの冒険者活動も、しっかりと把握されているようだ。


 まあ、そもそも隠すようなことでもないしな。

 冒険者の活躍は知られたほうが信頼に繋がり有利だ。

 冒険者ギルドも聞かれれば積極的に開示することを原則にしている。


「ルモンドの期待を裏切らないよう、今後もがんばっていくつもりだ」


「ええ。応援していますよ。何かお困りのことがあれば、当商会にご相談ください。奴隷以外にも取り扱っているものは多いので」


「わかった。そのときはよろしく頼む」


 そんな感じで、分割払いは滞りなく終了した。

 今後も、地道に返済していくことにしよう。

 分割払いを終えたら、シルヴィとのお楽しみも待っているしな。

 その日が待ち遠しい。

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