水曜日。宇宙の渚で待ってるよ

作者 嶌田あき

60

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★★★ Excellent!!!

リズミカルかつ綺麗な文体は前作の「月夜の理科部」から変わりなく、澄んだ山水を飲んでいるかのように文字が頭の中に溶けて行く。

今回の主人公、澪はキャラ立ちが良く、ドジっ子ながら芯が通っていて、ストレートに感情移入しやすい。元気発剌な彼女だか、個人的な見所としては中盤、しんみりした場面での会話や仕草。普段は猪突猛進な澪が「宇宙の渚」に想いを馳せ、リズムがゆっくりと進む描写は読み手を物語の中へと引き込んだ。

前作と比べボリュームはやや少なめだが、四十話以内に納めた中編小説とすれば、起承転結はしっかりと話に纏まりがあると思う。高高度気球の打ち上げだけで、ここまで話を飛躍できるのは紛れもなく執筆者の努力の賜物だろう。

ぜひ、お手に取って読んで見て下さい。

★★★ Excellent!!!

 良い作品には、共通してとある特徴が存在しています。
 この作品を読み始めてすぐ感じたのは、それらが複数揃っているというものでした。

 主人公にして、ぼっち天文部員の澪。
 澪の親友にして、大地に思いを寄せている陽菜。
 彼女らの友人にして、理科部部長の少年、大地。
 そして、天文部の顧問にして、澪が思いを寄せている相手、羽合。
 しかし、羽合の元恋人は、白血病で亡くなった澪の姉、綾だったのです。姉の面影が、二人の間に横たわる障害となって、たびたび澪を苦しめます。
 姉の亡霊を断ち切るためか、姉の意志を継ぐためか。卒業式に気球を打ち上げることを澪は決意するのですが――?

・早々に整う舞台。
・序盤で提示される物語の着地点(気球の打ち上げ)

 このように、「良い作品に存在している特徴」をふたつ(いえ、それ以上?)持っている本作は、期待に違わぬ完成度でした。
 複雑に絡み合い、すれ違う恋愛模様も魅力のひとつですが、本当の見せ場は中盤以降にやってくるどんでん返しでしょうか。伏線の全てが繋がって、ひとつの真実へと収束していく様と、周到なミスリードにやられて思わず驚嘆してしまいました。
 六年前。同校の卒業生であった姉は、何を思い気球を打ち上げたのか。真実を知った澪は駆け出します。
 目指す先は、宇宙の渚。
 空と宇宙が交じり合うその場所に気球が到達したとき、どんな光景が見えるのでしょう?
 みんなの優しさが詰まった感動のフィナーレは、ぜひあなたの目で確かめてください。

「宇宙の渚で、待ってるよ」

★★★ Excellent!!!


 宇宙のなぎさ。
 それは、空と宇宙がまじりあう、紺碧の境界線。

 天文部のたった一人の部員、澪は、顧問の羽合先生に片思いをしている。だが、羽合先生はかつて、亡くなった澪の姉の彼氏だった。
 そんな微妙な関係の二人。

 そこへ、澪の姉が6年前に空へ飛ばしたカプセルが発見される。
 カプセルは、当時理科部だった姉が高高度へ打ち上げた気球につけられたもので、姉はそのカプセルを飛ばして「宇宙のなぎさ」を目指していたらしい。

 澪は、姉の遺志をつぎ、「宇宙のなぎさ」をめざすことを決心する。

 憧れの羽合先生への想い。そして、姉が目指した「宇宙のなぎさ」へのあこがれ。最初はちいさな思いつきだったものが、失敗と試行錯誤を繰り返すうちに、「宇宙のなぎさ」は澪の目標となる。

 卒業後の進路の不安とか、羽合先生との関係とか、そして姉が遺した秘密に傷つき、何度もあきらめかけながらも、親友や仲間たちとともに、一途に成層圏をめざす澪。

 旅客機の飛ぶ高度、一万メートル。たった10キロ。そのさらに上。
 直線距離では短いけれど、まっすぐ上がるのは至難の高度。そこに必ずある「宇宙のなぎさ」。澪と仲間たちの想いをのせて、いま気球が高高度を目指す。

 ぜったいに流れ星を見られる方法って知っている?

 物語のラストで澪はその答えを見つけます。でもそれは、彼女が「宇宙のなぎさ」まで到達して初めて見つけることのできた答えです。
 あなたも、見て見たくはないですか?

 宇宙のなぎさを。