一難去ってまた一難

 俺は、『水蒸気にならない水』をイメージして、形を固定した水の壁と、体内に回復薬を生成した。魔力が瞬時に回復されたのを感じる。そして回復した分を更なる回復薬生成の分を残し、壁の固定につぎ込む。


 おそらくこれでどうにかなると思う……思いたい。どうにかならなかったら大惨事だ。


 レッドドラゴン戦の時、奴の大量の火球を『水蒸気にならない』というイメージ抜きの水の壁で防げたし、大丈夫だろう。


 さて、もうそろそろか……──


────

──うん、なんか普通に防げたな。俺の生成した水は水蒸気にならず、水蒸気爆発を起こさなかった……と思う。


 後ろからアキラ達の声が聞こえないな……あ、気絶してら……。


 とりあえず彼等に回復薬をぶっかけて仰向けにしておいた。飲ませようかと思ったが、気管に入るとまずいので止めておいた。さて火龍はどうなった? 喉の水を吐ききったのか?


……うん、多分水が出ていってるな。ヤツはもう首を降ってないし、口も開けていない。じゃあまた生成するか……


 だが、その前に戦いの場所は変更しておこう。また『ドラゴンブレス』を城にブッパされるとだるい。防がないといけないからな。


 窓を開けて、空中に生成した氷の足場の上を小走りで行くと、火龍の顔もそれに合わせてこちらへ向いてきている。そしてついには俺の方へ、その赤い翼をはためかせて飛んできた。このまま皇都の外まで誘導するか……てか、攻撃してこないんだな……。


────

──皇都を出た俺は近くの荒野に着いた……って、皇都のすぐ近くに荒野があるんだな。意外だ。


 そして荒野の中で、俺と地面に足をつけた火龍が向かい合う。さっきから……というか、誘導している最中は全く攻撃して来なかったのがまた意外だ。


 てかあいつ、最初の一発以外は自分からは全く攻撃してなくないか? なんでだ? 


 まあいい、最初の一発は俺達に攻撃してきたわけなんだから、もうあいつは敵だ。


(水魔法)


 さて、喉を水で塞がれたドラゴンさんや。どうする? また『ドラゴンブレス』する? まあするか。


 そう思っていると、火龍は突如飛び上がった。そして高く高く昇ったと思ったら、その巨体を傾けて、こちら向きにして、いきなり急降下してきた。


 その姿は身体中から噴き出す炎も相まって、夜空に流れる彗星のようにも見えた。


 世界がスローモーションになったのを確認して、その彗星の予測落下地点から外れる。そしてついでに、水蒸気爆発目的で予測落下地点に大きな水溜まりを生成した……もう、これは一種の湖だな。広さ的に。


 さて、自分から罠(?)に突っ込んでいく火龍、さすがにこれでは倒しきれないか?

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