全裸の交流

「おー、流石お城の風呂。豪華だ。僕はこれだけでご飯三杯いけるかもしれないよ。」


「我同感なり。しかし我同感できず。」


 入って来たのは二人組の男だった。片方はアキラ程の背の高さで、もう片方は彼よりも頭一個分低い。そして、二人とも黒髪黒目。異世界人だな。さて、こちらから話し掛けるか掛けまいか……。


「おーい! もしかしてだけど、お前ら二人とも異世界から来たー!?」


 アキラが水風呂に浸かったまま叫んだ。突然となりで叫ばれると心臓に悪いからやめてほしい。


「え? どこだい!? ……君達!?」


「……我驚愕なり。同類二人ありけり。湯気に混じりて風呂浸かりつつこちらの方へ叫ぶなり。名を……名前何て言うんやお前ら?」


 こちらに気付いた二人組は、タイルの上をペタペタと音を立てながら、こちらへ歩いて来た。


「俺はアキラって言うんだ。ベテルス王国から来た。よろしく頼むぜ!」


 アキラが水風呂に浸かったまま、勢いよく右手を上げた。冷たい水飛沫が俺の顔を襲う。今度は俺の番か……。


「俺はソウタだ。アキラと同じベテルス王国から来た者だ。そっちは何て言うんだ?」


 長身の方が口を開いた。


「僕はケイタって言うんだ。ここよりずっと北の国、アデラから来た。よろしくね。」


「ワイはショウヘイっちゅうモンや。ケイタと同じくアデラから来た。よろしゅう頼むわ。」


 長身の方はケイタ、低い方はショウヘイというのか……。それにしても見た感じ、この中でも俺が一番年上なのか……。


「なあ、ケイタとショウヘイも一緒に水風呂バトルやらないか? 楽しいぜ?」


「うーん……僕は……ショウヘイはどうしたい?」


「我やりたし。されど時間あらず。よって見送りなり。」


「じゃあ、僕らはそういう事で……。」


 そう言って、彼等が湯のある方へ歩いて行こうとしたその時、アキラが呟いた。


「え、時間が無いって……今何時なんだ?」


 ケイタが反応した。


「今もう七時くらいだけど……二人ともいつからここにいたの?」


「「え?」」


 嘘だろ……俺達一時間以上もここにいたのか、それでなお健在な俺の体……。


「俺達なんと五時半くらいからここにいたんだぜ? クールだろぅ?」


「アキラ、お前なんでそんなに危機感無いんだよ! 水風呂バトルは中断だ! さっさと熱い風呂入って体温めるぞ!」


 水風呂から素早く出……ああ冷てぇ……!そして熱い風呂に入ると……ああ何か痛ぇ!


「了解。二人ともまたどこかで! とか言いつつ熱い風呂に入っていく~! ……あぁ、身体中が何か変な感覚するぜぇ!」


「そりゃ君達はそんな長い間水風呂に浸かってたんだから当たり前だと思うけど……。」


「我驚愕なり。かける馬と騒ぐ鹿ここにありけり。雑音まみれて鼓膜震わし万の迷惑なっちょるわい。」


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