一級
アキラに続いてテントを出ると、辺りは他の冒険者達のテントの中からの明かりで明るかった。王や側近のいるところであろう大きなテントが見える。敵に丸わかりな気がするが……何か理由があるのだろう。
開けた場所に野営か……確かに見張らしは良いと言えばいいが、夜では明かりの届かない所はほとんど見えない。まあ大規模な護衛なら、開けた場所で野営をするしかないのだろう。
「もう少し外側行くか? あんま近くですると、臭いがこっちにくるかもしれないぜ?」
「そうだな。風下は……良かった、外側だ。じゃあ、あっちに行くか……。でも、離れ過ぎると帰ってこれなくなるかもしれないから程々にな。一応真っ直ぐ行くか。」
「そうだな。男二人で野外立ちション……中々に濃いストーリーな予感が……。」
────
──「この辺りで良いんじゃないか? これ以上行くと山の中に入ってしまうし、帰る時に結構時間が掛かる。」
「俺も賛成だぜ。では、いきますか……。」
──シトトトトトト……──
──シトトトトトト……──
草を打つ音が聞こえる。
「これが男性二重奏ってやつか……中々くるものがあるぜ。俺のミニエルは落ち着いてるがな。」
「唐突に下ネタをブッ込んでくるな……公衆の面前ではそういうのは止せよ?」
──シトトトトトト……──
──シトトトトトト……──
──シトトトトトト……──
「あれ? なんか三重奏になってないか?」
「ちょっと待て、ここには俺とアキラの二人しかいないはずだぞ? ……誰かいるのか? いるのなら応答頼む。」
「ここにいるぞ~~ガキ共~。」
「なっ!?」
「はっ!?」
目線を斜め上に上げると、そこにはズボンをあげてベルトを締め直している大柄な金髪マッチョがいた。
「お前誰スか!?」
「誰だ敵か? 俺達を殺りに来たのか?」
するとベルトを締め直した彼は、その筋肉がもりもりしている巨腕を顔の前で大袈裟に振って、
「いや違うぞ。俺はお前らと同じ護衛の依頼を受けてそれを遂行している、一級冒険者のジーベックという者だ。『地割れ』の二つ名を持っているが……お前らはそれを聞いた事無いか?」
「あっ、今日の冒険者ギルドで名前が挙がってた一人だ! まさか立ちション現場で本人と会うなんて思っても無かったけど……。」
アキラがすかさず反応した。確かに、そんな二つ名が挙がっていた気がする……。
「そうだ。その『地割れ』のジーベックだ! で、お前らは名前は何て言うんだ?」
「俺は三級冒険者のアキラだぜ!」
「ソウタだ。アキラと同じく三級冒険者だ。ところでアキラ、そろそろズボンをあげたらどうだ?」
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