野営
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──「なあソウタ……しりとりしようぜ? 今クソ暇で刺激が足りねぇ。このまんまじゃへばっちまう……。」
前方を歩くアキラが言った。その語気から彼の元気が無くなっているのが十分わかる。このまま数時間経ったら干からびてしまいそうだ……って、しりとりってそんなに刺激がある遊びか?
「まあ、結構時間たってるから、その気持ちもわかる。だけど依頼中……しかもこういう時にそれをするのは良くない。もう日が暮れかけているから、そろそろ野営に移るはず。それまでの辛抱だ。」
「わかってる……わかってるんだけれども、暇すぎて何かしたくなるんだ……!」
「もう少しの我慢だ。そしてあまりしゃべらない方が良いぞ。見つかったらいい目されない。」
「へいへい、わーりゃしたよ……。」
────
──「伝令ーッ! 今から野営を開始!」
俺達が開けた場所に着いた時、野営の連絡が来た。
「ようやくだ~あはははは~のほほ~ン。」
「おいアキラ、大丈夫か? 脱力してるだけだよな?」
すると彼は素早く振り返って、
「おう! ノープロブレムだぜ! じゃあ、野営の準備するか! テントもらいに補給車行くぞ!」
「お、おう……。」
何だろう、この変わりようは……まあ、別に気にかける事でもないか……。
アキラと共に、野営の用具が積まれている馬車に行く。そこにはたくさんの先客がいたため、俺達がそれを受けとるまでに、かなりの時間が経ってしまった。
こんなに時間が掛かるのなら俺かアキラのどっちかが用具を取りに行って、もう一人が火でも起こすなり何なりしてた方が良かったかもしれないな。
「ソウタ~水くれ~。」
「ちょっと待てよ……。」
アキラがテントの中で木製のコップを突き出してきたので、俺はその中に『水魔法』で生成した水を入れる。
食料は補給車から受け取れるが、水は自分達で調達、持ち運びをする必要がある。他の冒険者達はベルトに水が入っているであろう袋をくくりつけていた。
まあ、俺の場合は『水魔法』で生成すればいいだけなんだがな……。
「…………ん……ん……プハァー! ソウタの水は最高だぜ。消毒薬の味が全然しない。五臓六腑に染み渡る。もう一杯!頼む!」
「『五臓六腑に染み渡る』って……水というより酒を飲んだ時に言う言葉な気がするんだが……まあ、いいか……『水魔法』。」
「アザッス! ……ん……ん……ああ~美味ぇ! 最高だぜ! この水は金取れるくらい美味い! 水売りで暮らしていけるんじゃないか?」
「俺の水が美味いのは俺も認めるが、金取れてそれで暮らせる程かは知らん。そりゃ貴族の御用達にでもなれば別だが、話が掛かる事なんて無いだろうし、なるつもりも無い。」
「そうか……ところで、ソウタは今夜の見張り番なのか? 俺の場合はこの護衛中で一回も見張り番にはならないんだが……。」
「奇遇だな。俺もだ。まあ御前試合をする人にその前から見張り番をさせるのは、言い訳作りと捉えられるかもしれないからな。」
「そうか……じゃあ、そろそろ寝るか?」
「だな。だけど、アキラはさっき二杯も飲んだんだから、今たまってる分のをトイレ行って出した方がいいぞ?」
「そうだな。じゃあ、行ってくる。ソウタも来ないか? いや、来てくれませんか?」
「まあ……わかった。その敬語は、次からは使わないでくれ。違和感しかない。」
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