身の程知らず
「「は?」」
ちょっと待て、俺のレベルはあっちに割れてるのにも関わらず、御前試合だと!?
「俺もかなり驚いたぞ……単にソウタと彼らのレベルが違いすぎるってのもあるが、殆ど関係の無いアキラまでもが闘う事になるとはな……ちなみにお前らに拒否権は無いぞ。」
「だろうな。国王の使者から言われた事に、拒否権を求める方が間違っているのかもしれないな。まあ、最悪逃げればいいか……。」
「いやそれは本当にやめてくれ。」
「何で俺まで闘うはめになるんだ……。相手勇者パーティーじゃん、勝つの無理じゃん、失態さらすだけじゃん、オワタ……。」
アキラがドンヨリしている……まあ、頑張れ。それしか心の中でしか言えない自分が悲しい。
「それで、勇者パーティーの誰と闘うんだ? 対戦相手の事くらいは知っておきたい。」
「ソウタの相手は、勇者パーティー副リーダーの、クラキカゲフミ。アキラの相手は、同じく勇者パーティー副リーダーのトキミライだ。勇者本人は闘わないらしい。」
「まあ、万が一負けでもしたら、『勇者』の名に傷がつくだろうからな。火龍討伐の失敗と合わさって、名声をさらに失う事を恐れたんじゃないか?」
「おそらくそうだろうな。火龍討伐失敗の話はアキラから聞いたのか?」
「その通りだ。アキラの話を聞くうちに、この護衛に便乗して勇者パーティーが人材獲得の為の勧誘に乗り出すと思ったんだが、俺の予想はあっているだろうか?」
「大当たりだろうな。お前が勇者パーティーの副リーダーを負かした場合、ソウタが即戦力として使える事を、ソウタのレベルを知らない人達に認めさせる事が出来るだろう。」
「そして大衆をあおって、俺にパーティーの加入を半ば強制的に認めさせる……って策略だろうか?」
「そこまで考え付くとはな……さすがだ。」
「いや俺どうなるんだよ! 俺ただ単に相手にフルボッコにされて終わるだけじゃねぇか! 『ソウタの付属品』みたいな感じで闘わさせられるのマジで何なん!?」
「ちょっ、落ち着け……アキラだって、三級冒険者なんだから、勝てる可能性はまだあるだろ?」
「いや、そうなんだけどさ…………ああもうわかったよッ! やればいいんだろッ!!」
もう半ばヤケになっているが、これは仕方がないな。
「いや、俺もやんわり断ろうとはしたんだが、結局時間が過ぎただけで、何も変わらなかったんだ。」
「そういう事か…………まあ、とりあえず、ギルドまで帰ろう。もう後少しだ。」
「そうだな。今はそれが第一だ。」
「へいへい、わかりましたよ……俺は相手にフルボッコにされるかませ犬として頑張りますよ……どうせ負けるけど……。」
俺達を打ち付ける冷たい風は、その勢いを弱めるどころか、どんどん強くなり始めた。
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