当日
あれからおよそ三週間が経ち、月が変わった。この世界でも一年は365日と6時間で、十二ヶ月ある。一日は二十四時間で、一時間は六十分、一分は六十秒……まあ前の世界と多分同じだ。
「来たぞゾボロ。アキラはもう来てるか?」
「いや、まだだ。悪いが起こしに行ってきてくれないか? 時間には一応余裕があるが、さすがに遅れるとまずいからな。」
「だろうな……あいつ朝弱いからこうなる事もなんとなく分かってはいた……じゃあ俺は行ってくる。」
「頼んだ。」
ギルドを出て、そのまま真っ直ぐに進む。冷たい風が体を打ち付けるが、大した事ではない。そして向かいの、俺がさっきまでいた宿の中に入る。
「すまん。昨日伝えたように、アキラを呼びたいのだが、鍵を貸して貰えないか? 名はソウタという。」
「ああ、ソウタさんですね……こちらが鍵です。出来るだけ早く返却してください。」
「了解した。」
女将(?)さんから鍵を受け取って、脇の階段を経て、アキラが泊まっている……いや寝ている部屋の前に着いた。
他のお客さんの迷惑にならないように、音を立てずにゆっくりと扉を開ける。そして扉を閉める。
「おーい、アキラ起きろー。遅れるぞ、マジで。早く起きろー。」
「zzzzzz………………」
起きない……再度試みる。彼の体を揺さぶりながら。
「おーい、おーい、アキラ起きろー。遅れるぞ、おーい!」
「zzzzzz…………ZZZZZZ!」
…………俺は『水魔法』で生成した水を、アキラの顔にぶっかけた。
「…………ハッ……冷た! ……あ、ソウタオッス……って何でこんなことしたんだよ!」
アキラが片目で俺を睨む。まだ完全には目覚めていないようだ。
「とりあえず静かにしろ。お前がなかなか起きないから、強行手段に出ただけだ。鼻の穴や口の中などに入らないようにしてるから、安心しろ。健康には多分何も影響ない。」
「いや『多分』のせいで俺ちゃんくそ心配なんすけど! てか今何時なんスか? 早すぎじゃないんスか!?」
「とりあえず静まれ。他の客に迷惑だ。質問に答えよう。今は朝の八時半、集合は九時。今日からあっちで寝泊まりするから、荷物をあと三十分で纏めて出ないとアウトだぞ?」
「ゲッ……わーったっス。仕度すりゃいいんでしょ、すれば……。」
渋々ベッドから降りて荷物を纏める彼に、俺は更に言葉を掛ける。
「おい、口調が制御不能になってるぞ。」
「ん? ああ、すまん。悪い悪い。寝起きはたまに制御不能になるんだよなぁ~。」
「ほら、余裕は無いぞ? 俺は心の中で応援しているから、頑張れ……。」
「まあ俺の荷物そんなに無いんだけどな。」
────
──「来たか、かなりギリギリで間に合ったな。では、お前らの教師の元まで案内する。かなり厳しい人に依頼したから、覚悟しとけ。効果は期待しとけ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます