人材獲得

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──「そういえば、アキラはどこの町に転移したんだ? この国の何処かだとは思うが……」


 アキラは手のひらを俺に向けた。『今食ってるから待て』って事だろうか……しばらく経って、彼は口の中の物を呑み込むと、片手で口を押さえて、


「俺の場合はここ王都に転移したから、それ以外の町にはあんまり行ってない。依頼で何度か行った事があるくらいだ。ソウタは?」


「ここに転移したのか……俺はここから東にずっと行った所にある、この国最東端の町、ドバンっていう所に転移した。近くに魔の森っていう危険地帯があって、俺はそこに間引きに行った事がある。」


「『魔の森』……危険地帯かぁ。俺もいつか行ってみたいな~。なあソウタ、今からそこへ行って数日暴れて帰っても間に合うか?」


「無理。というか俺が既にかなり間引きしたから、これ以上狩ると生態系に悪影響が出るからやめろってギルドマスターに言われた。だから勝手に行って勝手に暴れるなよ。」


 アキラは見るからにゲンなりしている。そんなに闘いたかったのだろうか……


「まあ、それなら仕方ねぇな……。そういや知ってるか? クラギス帝国の皇都に拠点を置く異世界人冒険者パーティーについてだ。最近の遠征……まあ火龍討伐なんだが、その時に何人も大怪我を負ったらしくて、回復薬を探すのに躍起になってるらしい……」


 火龍ねぇ……名前から既にヤバそうだな。回復薬は持っている……というか作れるが、あまり人前には出したくないしな……


「回復薬かぁ……その火龍ってのは、結局は討伐出来たのか?」


「いや、逃げられたから、討伐できたかどうかはわからん。大量出血で、何処かで死んでるかも知れん。まあ討伐を証明する物が無いってのは確かだ。きっと汚名返上の機会を狙っているだろうよ。」


 それは痛いな。いくら重傷を負わせても、討伐を証明する物が無いと依頼自体は失敗になるだろうからな。そうだとすると、彼らは失った名声を取り戻すために人材も欲しがっているかもしれない……。


「そうか……それなら、回復薬の入手だけじゃなくて、人材の獲得にも躍起になってるのかも知れないな……。もしかしたらこの護衛の期間中は、会議に便乗した、人材を一ヶ所に集めて勧誘をするためのイベントが発生するかもしれない……。」


「それもありそうだな。俺達は三級冒険者だから、もしかしたら勧誘されるかも知れない。ソウタは勧誘を持ちかけられたらどうする?」


「断る。だが、向こうには俺のレベルがバレてるからなぁ。『わかった』と言って素直に帰してくれるかはわからない。」


「なるへそ。そんなにソウタはレベルが高いんだな……ちなみにどれくらいだ? 拒否権はある。三桁? 四桁?」


「教えねぇよ。個人情報はしっかりと守らないとな……。」


「じゃあ何で向こうにバレてるんだよ?」


うっ……これは話題をそらさねばな……


「まあ色々とあったのさ……ところで、アキラは、俺とここの店員さん以外の異世界人について何か知ってるか?」


「おいおい、それも個人情報だぜ? 言うわけ無いだろ? と言いたいところだが、自分が異世界人である事を公言してる連中がいるからな……教えるよ。まあ、さっき言った、異世界人パーティーの事なんだがな……。」

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