準・中二病

「なるほどな……そういう事か……でもお前の場合、口調だけじゃなくて仕草とかもキャラクター達から引用……いや、真似してるんじゃないのか?」


「そうっス。でも、大半はオリジナルだよ。こっち世界に来る前は、『中二病』って言われてた。まあ、その通りなんだが……俺は、純度100%の『中二病』では無いと思っていてね、『準・中二病』と称しているのさ。」


「『準・中二病』ねぇ……まあ、そこは個人の領域。俺がとやかく言う権利も無いか。」


「いやまあ別に言ってくれても良いけど、制御不能だからどっちみち変えられない。まあ一応こんな感じの口調をメインに出来るように意識してはいるが、集中が切れると元に戻ってしまう。」


「それ制御出来てね?」


「確かに一時的には制御出来るが、あくまで『一時的』だからな。まあ頑張ってみるつもりさ……ああ違う。つもりだ。」


「『ルールドオークのロース』二人前だ! タレは白い容器に入ってるから、そこのお玉を使ってくれ!」


 大皿が俺の目の前に出された。これが、『ルールドオークのロース』か。見た目は牛肉とそんなに変わらない……あれ、オークって、たしか豚じゃなかったか?


「お、きたきた。既に焼かれてるから、焼かずにそのまま食える。タレはこの白い容器に入ってるから、お玉ですくって掛ければ良いぞ。」


 これがタレが入っている白い容器か。見た感じ陶器に見えるな。


「了解。では、頂きます。」


 まずはタレを掛けずに一口……美味い。柔らかく、脂がいい感じにのっていて、白米や塩胡椒とよく合いそうだ。


 噛む度に出てくる肉の脂が白米を僅かに濡らして、味を付けつつ喉の通りを良くする。ヤバイ、想像しただけで、これは美味いとわかる。


「なあ、この世界には塩や胡椒や米ってあるのか?」


「塩は一般層にも流通してる。胡椒もあるけど、上流階級にしか出回ってないらしい。米は……俺は聞いた事が無いよ。だけど、この世界のどこかには有るかも知れない。まあ、この『王都』で流通してないあたり、この国には無いと思う。やっぱり欲しくなった?」


「ああ。これに塩胡椒、白米を合わせると、化けるだろう。脂身でチャーハンを作ってみるのも良いかも知れない。きっと合うはず。ところで、値段はいくらなんだ?」


「『ルールドオークのロース』は、一人前で銀貨2枚。野生のオークのロースは、同じ量で銅貨7枚。『ルールド』の名は伊達じゃないだろ? ああ、今日は俺の奢りだから、気にせんで食えばいいぜ。」

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