ギルドマスター視点

/時系列でいうと、六話から九話までの間です。/ 



 その日も俺は、机で仕事をしていた。


──コンコン──


「入れ。」


 受付嬢のまとめ役の彼女が入ってきた。


「こちらが、今日登録した冒険者の情報です。」


 渡された紙を見る。一人か……名前は……ソウタというのか。この辺りでは聞かない名前だな。


 そして彼の所持スキルの欄を見たとき、俺は違和感を覚えた。


「なあ。彼のスキルの名前、本当にこれで合っているのか?」


「はい。彼が書いたのはそのような名前のスキルでした。」


 そうか…………多分略したんだろうが、これは一度問いただす必要があるな。


「あのう……どうかなさいましたか?」


「ああ。気になる事があってな。何で彼のスキルは、『水魔法』と『鑑定』なんだ?」


「ええと、それはどういう事でしょうか?」


「ああ、わかりづらかったな。何故彼のスキルは、『水属性魔法』じゃなくて『水魔法』なんだ?」


 彼女もそれに気付いたようだ。


「あっ! 確かに、『水属性魔法』は聞いたことがありますが、『水魔法』は聞いたことが無いですね。スキルレベルに気をとられて気付きませんでした。」


「多分略して書いたんだろうが、これは一度問いただす必要がある。彼の呼び出しを、受付嬢の皆に伝えておいてくれ。」


「わかりました! では、失礼します。」


 口頭でスキル名を言うとき、略す人は結構いるから、彼はそれをそのまま書いてしまったのだろう。そう思っていた。


────

──『君が持つスキルは『水魔法』と『鑑定』で、どちらもスキルレベルは10で間違いないか?』


『はい。そうです。』


球が青く光った。


 嘘だろ……『水魔法』なんていうスキルが本当にあるのかよ。しかもスキルレベル10。これは、王都のギルドに連絡を入れないといけないな。ああ、また出張かよ……


 まさか未発見のスキルか?


 冒険者のスキルについての過剰な詮索は、ギルドでは禁止行為だ。最悪ギルドから抜けてしまうかもしれない。その後の質問で彼は一級冒険者より強い事も判明した。


 彼を失うのは、絶対に避けねばならない。


 とりあえず、今は俺に出来る事を行わなければ…………

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