帰還

ピコーン

〈レベルが上がりました〉 


 やがて、ドラゴンは輝く粒子となって消えていった。どうやらダンジョンの魔物が死ぬと、こんなふうに消えていくようだ。


 そして、奴がいたところには、もう何もない。そう、ドロップアイテムすら、奴は落とさなかったのだ。


 このダンジョンは、攻略するメリットが無いように思えてくる。宝箱の中は雑巾だし、魔物は何も落とさないし、おまけに罠のせいで強制的にバカみたいに強いのと戦闘しないといけない。


 明らかに、攻略側にとっての「うまみ」が無い。ここのダンジョンマスターはそうする事で、ダンジョンが攻略されるのを防ごうとしているのだろうか。


 後ろを振り返ると、少し前まであった閉じられていた扉は、元から無かったかのように消えているのがわかった。


「帰るか。」


 ダンジョンの位置は既に地図に書き込んであるし、ダンジョン自体の情報もきちんと記録している。これなら大丈夫だろう。


 俺はドバンへ帰った。あのダンジョンは、「行きは怖いが帰りはよいよい」みたいな感じらしく、戻るときはすんなり戻れた。


 まあ、「帰らせるつもりがない」、つまり「行きの時点で全員死ぬ」ようなダンジョンではあるが。


────

──「ギルドマスターに会わせて欲しい。」


「かしこまりました。私に付いてきて下さい。」


 帰って来てたんだな、ガレアスさん。


────

──「戻ったぞ。」


「来たかソウタ。それで、調査の結果はどうだった?」


「結果から言えば、ダンジョンは見つかった。それも、かなりの知能があるダンジョンマスターが管理しているであろう物をな。」


「何!?」


「まずは罠についてだ。斜面にある大きな穴の中を進むと、両開きの扉があるんだが、それの裏側には白い五芒星が描かれている。」


「それで?」


「扉を開けると広間に出るんだが、その中央に宝箱がある。その宝箱自体には罠は無い。まあ、水で流して広間の外で開けたから、罠が発動しなかっただけかも知れないがな。ちなみに中身は雑巾一枚だったぞ。」


「雑巾……な。それで、五芒星との関係は?」


「それを開けるためには、その扉から手を離して、宝箱の方へ行かねばならない。そう、このとき、開いていた扉が閉まる事で五芒星が再度つくられて、罠が発動する。しかも後ろから魔法が飛んでくるから、初見では気付きにくい。」


「それで、威力の方は?」


「俺はレベルが高いし、装備も性能がいいやつだから、傷一つ付かなかった。だが、他の人達があれを受けるとどうなるかは、わからん。まあ、扉は壊しておいたから、修復されていない限りは問題ない。」


「なるほどな。ダンジョンマスターがかなりの知能を持っているのは確かなようだ。それで、魔物はいたか?」


「いたぞ。その広間の奥にある階段を降りていった先にある広間にな。聞いて驚け。何とレッドドラゴンだぞ。」

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