もう一人

「それでドバンの町はどうなったんだ!?」


「落ち着いて下さい!被害はほとんどありません!」


「ああ、良かった……」


「ギルド内が騒いでいるのは、それの第一功労者のことでです。何と黒髪黒目の男性が、魔物の大群を一人で殲滅したんです!」


「黒髪黒目!?」


「はい!そして情報が大変少なく、正体不明なんです!」


 十中八九転移者だな。


「なるほどな。」


「それとドバンの町の冒険者ギルドが、魔の森の魔物の間引きの依頼を出すそうです。」


「魔の森?」


「町の西、つまりクラギス帝国との国境に南北に広がっている、高レベルの強い魔物が数多く生息する危険地帯です。六級以上でないと参加すら出来ないようです。」


 ガレアスさんにもしばらく会ってないし、レベルも上げる必要もある。


 テツヤとの戦いの時、俺は彼の魔力切れで勝った。もし彼の魔力が俺と同じくらいであったら、俺は負けていたかもしれない。


「そうか……俺はこういう者だ。ギルドマスターに会わせてほしい。」


「…………!……わかりました。では、私について来て下さい。」


────

──「どうした?ソウタ。」


「ドバンの町で行われる間引きに、俺も参加したい。行ってもいいか?」


 彼は天を仰いだ。


「まあそんなことだろうと思った。いいぜ。このゾボロが許可する。」


「感謝する。」


「そういえば、お前の事を耳にした異世界人パーティーから、パーティーへの勧誘の通知が届いているんだが、どうする?」


「断っといてくれ。俺はソロ向きだから。」


「そうか……わかった。俺の方から断りの連絡を入れておく。本当にいいんだな?」


「ああ、いいさ。」


「了解。ああ、それとお前に指名依頼が来てるぞ。ハドス・バラン伯爵殿からだ。」


 ハドス・バラン?ああ!あの盗賊に襲われてたお偉いさんのことだ!


「内容は?」


「お前が前回使った回復薬とやらが欲しいそうだ。息子の病気を治したいらしい。」


「回復薬かぁ……」


 あれが他の人に知れ渡ると面倒なことになりそうだなぁ……あの人はそんなに悪そうな感じはしなかったが……どうしよう。


「彼に病気の息子がいるのは本当だ。これはかなり公になってるぞ。どうする?」


……やるか。


「その依頼、受けよう。ただし条件付でな。条件は一つ、他人に俺の回復薬の事を言うな。これでいいか?」


「ああ大丈夫だ。ここでもう納品するか?」


「する。入れる用の瓶を持ってきてくれ。」


「そう言うと思って、既に持ってる。これに入れてくれ。」


 ゾボロさんはニヤッとして、ポーションなんかがよく入ってそうな小瓶を取り出した。


「思ってたんだな。………………これぐらいでいいか?」


「良いぞ。これで納品は終わりだな。報酬の黒曜貨200枚はどうする?冒険者証に入れとくか?」


「そうしておいてくれ。じゃあ、ドバンまで行って来る。」


────

──携帯食料を買い込んで、布袋に詰めた。


 もし今日中に着けなくても、多分大丈夫なはずだ。夜営用にライターみたいな魔道具も買ったしな。


 では、行くか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る