ベテルス王国編

初めての異世界

 俺が意識を取り戻すと、目の前には城塞のような建物があった。神が町の近くに送り込むと言ってたから、これが町なのだろう。


 周りを大きな壁で囲っているのは、魔物から町を守るためだろうか。


『チュートリアルダンジョンからの転移を確認しました。この世界で使われている硬貨を、日本円で約五十万円ほど送ります。ぜひ役立てて下さい。』


 久しぶりの神の声がしたと思うと、目の前に小さな布袋が落ちてきた。開けてみると、大きな金貨が五枚入っていた。初めて金を生で見たかもしれん。


 町の入り口が見えたので、そこへ向かった。


「ようにいちゃん。あんた変わった服装してんな。」


 門番の人に声をかけられた。


「そうですか?」


「ああ、何で寝間着のままなんだ?」


(寝てるときに喚び出されたから)

とは、さすがに言えないよなぁ。


「俺が生まれ育った国では、これが普段着なんです。」


……嘘です。ごめんなさい。


「寝間着が普段着な国なんて聞いたこと無いぞ?」


 絶対怪しんでるよなこの人。そりゃそうか。


「まあ聞いたこと無いのも無理はないでしょう。何せ俺が生まれ育った国はここから遥か東にあるんですから。」


…嘘である。東どころかこの世界にも無い。


「まあいい、身元を証明するものはあるか?あるなら見せてくれ。無いならそれに触れて

くれや。」


 門番さんは、何か水晶玉みたいなものを指差した。身元を証明するものなど持っていないので、言われた通り触ると、それは青く輝いた。驚いて門番さんの方を見ると、


「にいちゃんが犯罪を犯していないことはわかった。仮の保証カード作ってやるから、名前を教えてくれ。」


 ここでどう答えるべきか。もしかしたらこの世界では、前の世界でよく読んだラノベのように、平民は名字が無いのかもしれないしなあ。心の中で門番さんに、


(鑑定)


ガレン (39)

ヒューマン Lv24

性別 男

ステータス

体力 618/786

魔力 490/490

筋力 561

敏捷 528

防御 493


スキル 剣術 Lv4

剣を持った時、筋力のステータスが1.2倍になる。レベルが上がるほど、強化倍率が高くなる。


 なるほど、名字は無いのか。てかステータスの値がどれも三桁だ。これがこの世界の人類の平均程度なら、それの百倍くらいのステータスである俺は人外の領域に入っているのかも知れない。


 それに、魔力以外のステータスはレベルの上昇だけでこうなっているから、本格的に鍛えだしたらもっと上がるかもしれない。おっと、今は名前を言わねば。


「ソウタと言います。」


「ソウタか。しばらく待ってろ。」


数十秒後、


「ほれ、仮の保証カードだ。失くすなよ。ちなみに仮でない、身元を保証するものが欲しいなら、冒険者ギルドに登録して冒険者証を発行してもらうといい。この通りをまっすぐ行った突き当たりにギルドがある。」


「ありがとうございます。ところで、ここがどこか教えてくれませんか?」


 門番さんは目を見開いて、


「にいちゃん、ほんとに何者だ?まあいい。ここはベテルス王国の最東部の町ドバンだ。隣国のクラギス帝国との国境近くにある。」


親切にも教えてくれた。


「そうですか。どうもありがとうございました。これはお礼です。」


 袋から大きな金貨を一枚取り出して、門番さんに差し出した。


「要らねえよ。こんなの誰だって知ってる。ちなみに俺はガレンって言うんだ。よろしくな。そして遅くなっちまったが、ようこそ、ドバンへ。」

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