必殺技の習得。

Y.T

第1話

 昔、まだぴちぴちの19歳の頃のお話です。


 ある日、僕は職場の先輩というか上司というか班長というか、そんな人にある技の存在を教えてもらいました。


 その名も『波動突き』


 先輩の話を要約すると、それは、離れた相手に全く触れずに自身の攻撃を当てる。というものでした。


 いくらピュアな10代の頃の僕でも、そんなものを信じるわけにもいかず、


 「班長はできるんですか?」


 と聞いてしまった。


 「できる訳ないじゃん。(笑)」

 

 「ですよね〜。(笑)」


 「でもさ、こんなモンがあるんだよ。」


 先輩が差し出したのは、一冊の教本でした。

 開かれたページには確かに、『波動突き』と書かれている。


 「マジですか?」


 「知らない。(笑)」


 僕は少し馬鹿馬鹿しく思いながらも、ちょっと興味を持ち始めます。


 教本に書かれているなら、きっとそれを使える人もいたんだろうな。

 そんな技ができたら最強じゃん!


 そんな気持ちから、その技を練習してみる事にしました。


 僕は、休みの日の2日間を利用して、鏡の前でをし続けました。


 1日目の夕方、鏡の前の床には僕の汗で水溜まりができており、根拠のない自信が僕を支配しました。


 こんだけ頑張れば、明日にはできる様になるだろう。


 そして、2日目の昼過ぎ、やはり汗が水溜まりを作り、今もなお僕のあごから落ちる、その一滴一滴がその水溜まりの面積を広げていきます。


 その時ガチャ、と部屋のドアが開きました。


 その技を教えてくれた人とは別の、相部屋の先輩です。


 「うわ、汚ねえな!何やってんだ?」


 まだ夜ではないというのに、帰ってきた先輩に僕は焦りました。 


 ただ同時に、ある好奇心が僕に湧き上がります。


 この先輩にこの技を当てたらどんな反応をするのだろう。


 「はあっ‼︎」


 僕は、『波動突き』を放ちました。


 先輩の身体がビクッと揺れます。


 お? 効いている、のか?


 一瞬、目を見開いた先輩ですが、すぐに僕の元へ歩みより、僕の頬を平手で叩きました。


 「俺、もっかい出かけてくるから、キチンと掃除、しておけよ。」


 やはり必殺技とは、一朝一夕で身につくものではないんだなぁ、と思いました。


 僕は未だに、『波動突き』を使うことはできませんが、それ以外の色々な武器を持っています。


 これを読んだ皆さんも、その人にしかない、色々な武器を持ってるんでしょうね。


 (何これ?)


 追記


 僕が一生懸命に練習したコレは間違いだった事が判明しました。


 この理不尽な事実は、いつも良くして下さる、ある作家さんに送りたいです。


 

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必殺技の習得。 Y.T @waitii

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