終章 - 2 沖縄(3)

 2 沖縄(3)




 そんな芽依の返事を聞きながら、大崎は慌ててポケットからスマホを取り出し、連絡先から番号を呼び出し電話を掛ける。

 しかしその番号はすでに使われておらず、

「おい、おまえ、あいつの実家の電話番号知っているか?」 

 彼は慌ててそう聞いたのだ。

 しかし永野芽依もそこまでは知らず、二人は急いでタクシーを呼び付けて、病院事務所に向かったのだった。

「吉崎さん、言ってたんです。もうすぐ、二十年離れ離れになっていた人に会えるって。その人の名前が、わたしによく似てるんだって、教えてくれたんです」

 今度やってくる医師が自分に代わって指導医になると、そう教えられた日に、彼は芽依にそう告げていた。

「ってことは、やっぱり海外とかに、彼は行ったってことなのかな……?」

「でも、高尾山で会うんだって、言ってたんですよ」

「ってことは、彼女の方が日本に戻って来たってことか……?」

 ただとにかく、おかしいと思えることが多過ぎるのだ。

「しかしどうして、医師免許を破り捨てるなんてことになる?」

 真っ二つに破られた免許証が、放り置かれていたソファーの上に捨てられていた。

 となれば、もう医師としては働けない。

 ――しかしどうして、誰にも告げず、何もかも捨て去って……。

 ――高尾山に行くからって、なんで医者までやめちゃうのよ!

 二人それぞれそんなことを思いながら、タクシーは砂埃を上げながら街中目指して進んで行った。

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