終章 - 2 沖縄(2)
2 沖縄(2)
「よし、俺もやっと帰れるから、あいつんとこ近いし、これから行ってみるかな」
そうして黙っていたことを怒鳴りつけてやると、吉崎涼太と同じ時期にやってきた大崎健斗はさっさと部屋と出て行ってしまった。
するとその後ろを永野芽依も慌てて追い掛け、二人は揃って彼の借家へ向かうのだ。
そうして家の前に立った時、大崎は思わず声にした。
「なんだよ、これ……」
――欲しいものがあれば、お好きにどうぞ。
そんな文字が大きく書かれ、その下にはあまりに小さく、
――週末には、業者がすべて撤去します。
と、付け足してある。
それはそこそこ大きなベニヤ板。
そしてそんなものの裏っ側には、ありとあらゆるものが放り置かれているのだった。
そこは雑草だらけの大きな庭で、冷蔵庫や電子レンジ、オーディオ機器なんて電化製品から、ソファにテーブル、食器に箸なんてのもあり、ここを引っ越したってことにせよ、 明日からどうやって生活するのかって思ってしまう。
「これって、どういうことなんだ? これじゃあ生活できないだろう? それとも宝くじでも当たって、まったく新しい人生でも始めようってことか?」
そう言った後、大崎はゆっくり家屋に近付き、窓から中を覗き込む。
やはり想像した通り、あるのは畳と照明器具ってくらいのものだ。
となればやっぱり、彼はここから出て行ったってことだろう。
そう思い、大崎が諦め顔で、永野芽依へ視線を向けた時だった。
彼女が微動だにしないまま、何かをジッと見つめている。
それも睨み付けるような顔付きで、ただ見ているなんて感じじゃない。
視線の先に目を向けて、大崎もすぐに気が付いた。
「おい、あれって……」
「はい、ですよね、だぶん……」
「これが、ここにあるってことは……?」
「……しか、ありませんよ。でも、どうして?」
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