第3章  -   4  変化(5)

 4  変化(5)




 エレベーター裏にある非常階段に駆け込んで、その先どうするかなんて考えないまま必死に四階まで駆け上がる。

 ――どこだ? どこにある?

 あっという間に四階に到達し、涼太は懸命に左右を見やった。

 しかしその姿はどこにもなくて、やっぱり無理か……なんて、微かに思った時だった。

 見知らぬ医者――だと思うのは、単に白衣を着ているからだ――がエレベーターから現れ、そのまま涼太の方へ近付いてくる。そしてちょうど半分くらいまで来たところで、ノックもせずに扉を開き、その部屋の中にさっさと消えた。

 そこからは、正直あんまり覚えていない。

 部屋の前まで走っていって、扉に貼られた金属のプレートを真っ先に見た。

〝第一応接室〟と書かれていて、涼太はここに間違いないとホッと胸を撫で下ろす。

 その時とつぜん、部屋の中から声が聞こえた。

「ちょっと待ってください! 手術ができないって、どう言うことですか?」

聞いたことはなかったが、これがきっと優衣の母親の声なのだろう。

「だってその手術するために、ずっと入院していたんですよ」

「わかっています。しかし、状態が一向に好転しないものですから……であれば、ということでして……」

「手術できなければ、死んでしまうんでしょ? あの子は手術しないと、もう生きられないんですよね? そう仰ってましたよね? そうですよね! 先生! なんとか言ってください!」

そんな声を聞いてすぐ、涼太はその場にいられなくなった。

 ――手術ができない!

 ――死んでしまう?

 ――もう生きられない!

 そんな言葉がぐるぐる回って、頭が一気に気持ち悪くなった。

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