第2章 - 1 出会い(5)
1 出会い(5)
それからあっという間に一週間だ。
彼を初めて目にしてから、すでに十日と一日が過ぎ去っていた。
彼のリフティングは日に日に上手くなり、今では三回くらいならまず間違いない。しかし五回を過ぎたあたりであっちこっちにふらふらし始め、どうしても六、七回で終わってしまう。
それでも優衣は大喜びだ。いずれ上手くなるとは思っていたが、たった一週間でここまでくるとは想像すらしていなかった。
だからこれまで以上にワクワクしたし、この頃にはもうほとんど声に出しての応援となった。
「すごい! 後三つで十回よ!」なんて喜んでみたり、彼のリフティング回数を一緒になって数え出すのだ。
「いいち、にいい、さああん、ああ! もう! どうしてえ?」
などと声にしていると、本当に一緒にがんばっているような気になった。
そうしてひと月近く経った頃、少年は驚くくらいに上手になる。十回、二十回は当たり前で、昨日はなんと八十回を数回ほど超えた。さらに今日はちょっとした驚きもあって、優衣は瞬きするのも惜しいくらい必死に目を向けている。
ギブスが突然、グッと小さくなったのだった。
普通そんなものなのか、それとも彼の治りが早いのか? これまでの重そうなものに替わって、ずいぶん身軽そうに見えるのだ。さらに肩から固定されていたサポーターも消えて、今日はいきなり一回目から九十回を超えた。
――すごい! すごい! もうすぐ百回よ!
動きが一気に滑らかで、見ているこっちがますます嬉しくなっていく。
だから窓をそおっと開けて、顔をほんのちょっとだけ出したのだ。
それがちょうど五十回目を過ぎたくらいで、それから一気に九十回まで失敗なしだ。
優衣の興奮も絶好調で、窓を開けていることなどあっという間に忘れ去る。そうしてリフティングは百回目に到達。
その瞬間、優衣は素直に大声を上げた。
「やった! やった!」と言って手を叩き、
「すごい! すごい!」と叫んで握り拳を振り上げる。
とうぜん声や拍手は階下まで響き、そうなっても優衣はただただ喜んでいた。
ところが次の瞬間だ。
え? と思った時には遅かった。
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