第139話


キーンコーンカーンコーン…


「それじゃあ、今日はここまで」


昼休み開始を告げる金がなり、四限を担当していた教師が教材を抱えて教室を後にする。


「ふぃー…午前終わったぁ…」


「腹へったぁ…」


一気に教室の空気が弛緩して、生徒たちは急いで席を立って購買部へ走ったり、部活の昼練へと向かったりと忙しい。


そんな中、俺は自分の席に座ったまま朝のうちに買っておいたパンを机から出して食べようとする。


その時だった。


「よお、安藤。今ちょっといいか〜?」


「…?」


一人の女子生徒が俺に声をかけてきた。 


校則を完全に違反している髪の色。 


全ての爪に施されたネイル。


茶色く焼けた肌。


典型的なギャルの見た目のその女の子の名前は、北川麻里。


このクラスの生徒であり……クラスの中心的な存在。


あまり周囲とコミュニケーションを取らない俺なんかとは本来関わることがないようなやつだった。


「何かようか?北川」


「おう、用だ用。安藤。あんたさー、この後誰かと昼食べる予定、ある?」


「誰かと?」


「そう。誰かと」


「特にないな」


「お!てことは一人?」


「そうだが?」


ぼっちじゃん!ださ!などと揶揄われるのだろうか。


そう思ったが、全然違った。


「おお!いいじゃん!じゃあさ、安藤…!今日の昼はあたしらと食べようぜ!!」


「は…?」


一瞬何を言われたのかわからなかった。


俺が戸惑っていると、北川が俺の手を引いて無理やり立たせる。


「ほらほら。いいだろ?こっちこいよ。一人で食べるよりみんなで食べた方が美味しいって!」


「ちょ、待てよ…!」


俺は止めるが北川は全然話を聞いてくれない。


俺は結局、食べようとしたパンを持ったまま、教室の中心で机をくっつけて食べている数人の男女グループ……いわゆるクラスの一軍の中に無理やり突っ込まれた。


「はい、ここ安藤の席」


「えぇ…」


そしてなんとすでに俺の席まで用意されていた。


「ええと…」


俺は戸惑いながら、北川以外の生徒に本当にいいのか?と視線を巡らせた。


「お、安藤くんじゃん…!」


「安藤くんだ!」


「すげー!中級探索者の安藤!」


「一緒に食べようぜ、安藤!」


意外にも歓迎ムードだった。


…一体どういうことだこれは。


どちらかというと俺はあまりクラスメイトから好かれていないという認識だったのだが…


中級探索者という地位が、スクールカーストの壁を破った…?


「あの…よろしく、安藤くん」


「え…?」


よく見ると、グループの中には宇崎の姿があった。

席は俺の隣。


俺に向かって少々ぎこちない笑みを浮かべている。


「へへっ、頑張れよ、宇崎〜」


俺を無理やり引っ張ってきた北川がバシバシと宇崎の肩を叩く。


「あ、ありがと…麻里ちゃん…」


宇崎が小さな声で北川にお礼を言っていた。


…なるほどそういうことか。

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