第120話
ガギギギギン!!!
海堂の作り出した空間に鋭い衝突音が響いた。
海堂の放った弾丸が、俺の魔法障壁によって阻まれたのだ。
バラバラ、と弾丸が地面に落ちる音がする。
「ほぅ…そういうことも出来るのですか…」
海堂が目を細めた。
「攻撃だけでなく防御もそれだけ出来るとは…ずいぶん汎用性に優れたスキルなのですね…事前に読ませてもらった報告書では炎を操るスキルを持っていると書かれてあったはずですが…どうやらただ単に炎を操るスキルというわけでもなさそうだ」
「…」
海堂は楽しそうに笑う。
「あぁ…いい。いいですよ安藤さん…!あなたみたいな強い人にあったのは初めてだ…私のこの固有空間で…私とここまで張り合えたのは、何度も言いますがあなたが初めてですよ…!」
「はぁ」
ずいぶん興奮しているらしい海堂が捲し立てる。
どうでもいいので早くかかってきて欲しい。
こちらから行ってもいいが、海堂のスキルが無駄に強力である以上、手加減できるか怪しい。
うっかり海堂を殺してしまいかねないため、俺はあまり自分からは仕掛けたくはなかった。
「ですが…このまま互角の戦いを続けるのも退屈です…少しグレードを上げていきましょうか…!安藤さん…!私の力の真骨頂をお見せしますよ!!」
海堂がそういった瞬間、ふっと全身が浮遊感に包まれた。
いつの間にか足場が消えていて、俺の体は下へと向かって落ちていた。
何やら周囲の温度が上がっている。
俺は落ちながら、下に視線を落とす。
「お…?」
下には煮えたぎるようなマグマが張り巡らされていた。
一瞬、どこかの活火山の上にでも転移したのかと思ったが、すぐにこれが海堂の能力なのだと思い至った。
「さあ!安藤さん…!これにはどう対処しますか…!」
頭上を見上げると、海堂が俺を見下ろしていた。
海堂の体は空中に固定されたままだ。
これもまた力を使っているのだろう。
「熱いな…」
俺は肌を撫でる熱気に顔を顰める。
「安心してください、安藤さん。マグマに溶けて死んでも私が生き返らせてあげますよ…!最も、死ぬ瞬間はとてつもなく苦しいでしょうがね!!ははははは!!」
頭上で海堂が高笑いしている。
なかなかいい性格してやがるな。
「はぁ…やれやれ」
だが、俺とてこのままマグマに焼かれるわけにはいかない。
俺は少々魔力を込めて、水属性の氷結魔法を使った。
「アイス・ワールド」
ピキィイイイイイイイイ!!!!
「なっ!?!?」
莫大な魔力を込めた俺の氷結魔法によって、海堂のマグマは一瞬にして凍りついた。
「よっと」
俺は氷の上に降り立つ。
頭上から、驚愕の顔の安藤がゆっくりと下降してきた。
「こ、こんなこともっ…出来るのですねっ…ふふ…」
まだまだ余裕、と言った感じを装っているのだろうが、明らかに声が震えていた。
俺を見る目が、何か恐ろしいものを見るもののそれに変わっている。
「そろそろ俺の実力を認めて、ここから出してくれないか?もう十分だろう?」
俺はこの茶番をさっさと終わらせたいためにそう言った。
海堂の顔が屈辱に歪む。
「な、何者なんですか…っ、安藤さん、あなたは…」
「別に。ただの一介の高校生だよ」
「そ、そんなわけあるかぁあああああ!!!」
海堂が叫び声をあげた。
「これでは終われない…!私の能力は…固有空間は最強なんだ…!それを証明するまで戦いは終わらない…!付き合ってもらいますよ、安藤さん…!」
「はぁ…」
海堂は俺をこのここから出す気はなく、徹底的にやるつもりらしい。
最初は俺の実力を確かめるのが目的って言っていたはずなのに、これでは完全に主旨から外れてしまっている。
「面倒臭い…」
まだまだ戦いが終わりそうもないことに、俺は重苦しいため息を吐いた。
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