第105話


『ウゴォオオオオオオオ!!!!』


俺が魔法を撃ち込んだことで、ボス部屋の天井が崩落し、キング・ゴーレムに襲いかかる。


『ウゴォオオオオ!!!』


大岩がゴーレムの巨体に直撃し、致命的なダメージを与える。


『ウゴ…ッ、ウゴォオオ…』


いくつもの大岩に押しつぶされ、身動きが出来なくなったゴーレムは、しばらくの間、大岩を退かそうと抵抗していたがやがて目から光を失って動かなくなった。


どうやら絶命したようだ。


ギィイイと、背後で扉の開く音がする。


ボスが倒され、ボス部屋が攻略された証拠だ。


「まじ…かよ…やりやがった…」


衛宮が呆然と呟いた。


見開かれた目で、大岩に潰されたキング・ゴーレムを凝視している。


「まじかよ…まじかよまじかよまじかよ!」


興奮した声をあげて、俺の元に駆け寄ってくる。


「あんたすげーよ!!まさか本当にキング・ゴーレムを倒すなんて…!信じられねぇ…!あんた本当何者なんだよ、安藤さん!」


俺の体を掴んでぐらぐら揺らしながら、衛宮がそう捲し立てた。


「ああ。そうだな」


「いや、なんでそんなに反応薄いんだよ!!あんた今偉業を成し遂げたんだぜ!?中級探索者がキング・ゴーレムを一人で討伐するなんて前代未聞だ…!安藤さん、この俺が保証する!あんたは今に、上級冒険者になって、日本中…いや、世界中に名の轟く探索者になるぜ…!!」


よほどテンションが上がっているのか、そんなことを言い出す衛宮。


しかし、別に今回の戦いに関しては、そこまで力を使っていないし、そんなに驚くことでもないだろう。


天井を崩落させて動きの遅いゴーレムを押しつぶす…なんて戦い方はちょっと頭をひねれば誰にでも思いつきそうなものだ。


別段すごいことをしたわけでもない。


それに、日本中に名前が轟いてもらっちゃ困る。


俺は静かに暮らしたいのだ。


「まぁ、今回は運が良かっただけだ」


俺は興奮した衛宮に単騎でのキング・ゴーレムの討伐を言いふらして欲しくなかったためにそう言っておく。


「すげぇ…まじかよ…これだけのことをしておいて自慢の一つもないこの謙虚な態度…!これが強さの秘訣ってことですよね!?安藤さん!?」


だが、衛宮は完全に俺が謙遜してそう言ったと捉えたようだ。


相変わらず端末を片手に持ちながら、「すげーよ」とか「前代未聞だ」と呟いている。


「よし、じゃあ、無事にボスも討伐したことだし、地上に戻ろう」


「あ…はい!」


その後、俺はキング・ゴーレムの魔石を回収し、ようやくちょっと落ち着いてきたらしい衛宮とともにボス部屋を出て地上を目指した。


途中、念のため衛宮に口止めをしておく。


「なぁ、衛宮。ちょっと頼みがあるんだが?」


「なんっすか、安藤さん」


「俺がキング・ゴーレムを討伐したことは出来れば人には話さないで欲しいんだ」


「えっ!?なんでですか!?大手柄じゃないですか!?」


「いや、俺は一人で静かに探索者をやりたいんだ。だから、あんまり他の探索者に目をつけられるのは…」


「えぇ…どこまで謙虚なんですか…というか、安藤さん。今更それは無理ってもんですよ」


「おいおい、なんでだよ。一応、俺、あんたの窮地を救ったんだし、これくらいの頼みは聞き入れてくれても」


「だって、安藤さんが俺を助けてから今までの一部始終、全国に配信されちゃってますし」


「は…?配信…?」


「はい。ほら、ただいま同接10万です。十万人が今、安藤さんを見てますよ」


そう言って衛宮がずっと肌身離さず持っていた端末の画面を俺に見せてきた。






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