第77話
「はぁ…結局ここまでついてきやがって…」
ため息と共にそう呟いた。
今、俺の目の前にあるのは探索者センター。
あれから、有村と四ツ井の二人はずっと俺の腕を掴んだまま離さず、結局探索者センターまでついてきていた。
「これから探索に出られるのですか?」
四ツ井が聞いてくる。
「ああ、そうだ。そういうわけでここでお別れだな」
「いえ、そういうことなら私たちも同行します」
「…あぁ、やっぱりそうなったか」
なんとなくこうなる予感はしていた。
だから、ここに辿り着く前になんとか別れたかったんだが、二人ともその隙を与えてくれなかった。
「いい機会だから、安藤くん。あなたの実力を見極めさせてもらうわ。一緒に探索にいきましょう」
有村も乗り気だ。
「あら…せっかく安藤さんと私の二人きりで探索に行けると思ったのに…」
「それはこっちのセリフよ。邪魔だからあなたはついてこなくていいわ」
「いいえ、邪魔なのはあなたです」
「足手纏いになる前に、帰った方がいいんじゃないかしら?」
「…このっ」
「はっ」
またしても喧嘩を始める二人。
なんだかここまでくると逆に相性がいいというか、仲がいいんじゃないかと思ってきた。
「ほら、喧嘩すんなって。ついて来たけりゃ勝手にしろ。俺は行くからな」
「あっ、待ってください安藤さん」
「待ちなさい、安藤くん」
俺はさっさと冒険者冒険者センターに入っていく。
二人も慌ててついてきた。
「本当についてくるのか?」
探索者の装備を身につけた俺たちは現在、ダンジョンの扉の前まで来ていた。
俺は改めて二人に同行するのかの確認を取る。
「ええ、もちろんです」
「当たり前よ」
二人とも間髪入れずに答える。
「そうかい…じゃあ、遅れないでくれよ」
「任せてください!お役に立てるように頑張ります」
「あなたは気にせず進みなさい、安藤くん。私が足手纏いになることなんてないから」
二人はやる気のようだ。
この分だとペースを合わせる必要はないようだ。
俺は自分の探索者カードを読み取り機に翳して、ダンジョン内へと足を踏み入れる。
「安藤くん。ちなみになんだけど、今日はどこで何をするつもりなの?クエストは受けてないみたいだけど」
「そうだな…今日は…」
いつもながら、放課後の探索なのでクエストは受けていない。
理由は省略。
今日の目的を訪ねてくる有村に、俺は少しの間逡巡する。
「まぁ、オーク狩りかな…」
この間の探索で、オーク狩りはかなり実入りがいいことがわかってるからな。
七階層以降を目指して、どんどん降りていくとしよう。
「うっ…オーク、ですか…」
四ツ井が表情を顰める。
オークに殺されかけた時のことを思い出したのかもしれない。
「嫌なら他のモンスターにするか?」
俺は四ツ井を気遣って尋ねる。
「い、いえ…大丈夫です。安藤さんと一緒なら」
「…そうか。あんまり無理すんなよ」
四ツ井は、まだ下級探索者で適正階層は一から五階層までだからな。
六階層以降に踏み入った時は少し気を使ってやらなくてはならないだろう。
「って、そういえば、四ツ井。お前確かクランに入ってたよな?あの二人はいいのか?」
そこで俺は、四ツ井には仲間がいたことを思い出す。
あの二人がいながら、俺なんかと探索に出ていていいのだろうか。
「ああ、それなら問題ありません。すでにクランは解散しましたから」
「…え、解散したのか…?なんでだ?」
「なんでって…あんなことがあったのにクランを続けろという方が無理ですよ」
「あんなこと…?」
「ああ、そういえば安藤さんは知らないんでしたね…私、あの二人に囮にされて見捨てられたんですよ」
「えっ!?そうなのか!?」
確か二人は四ツ井がじぶんから囮になったと言っていたが…
あれは嘘だったのか。
「オークに敵わないとみるや、二人は私を蹴飛ばして囮にして、その場から逃げ去りました。二人が安藤さんに何を言ったのかは知りませんが、それが真実ですよ」
「…そ、そうだったのか…」
そりゃもう仲間としてはやっていけないな。
にしてもあの二人、そんなクソ野郎だったのか…
「なるほどなぁ…ちなみになんだが、四ツ井
その後二人はどうなったんだ…?」
日本一の財閥のお嬢様を、死に追いやるようなことをしたんだ。
あの二人はタダじゃ済まされないだろう。
俺が気になって尋ねると…
「ふふふ…どうなったんでしょうね?」
四ツ井が黒い笑みを浮かべながら答えた。
怖っ。
怖すぎるだろ…
「ただ一つ…あの件でお父様はかつてないほどお怒りだったとだけ」
「あー…」
なんか色々察してしまった俺はそれ以上尋ねないことにした。
〜あとがき〜
新作の『トラックに轢かれて気づいたら白い世界のオーソドックスな異世界転生!〜成長チート、言語チート、魔法チートの三つのチートを駆使して剣と魔法の世界を生き抜きます〜』が連載中です。
よろしくお願いします。
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