第43話
「か、帰ったぞー」
「お兄ちゃんお帰りなさい!」
「おお、美久。今日もドアの前で待ってたのか?」
「うん…初めての探索に行くって言ってたから、無事かどうか不安で…」
「心配してくれてありがとな。おかげさまでこの通り無事だ。美久が買ってくれたお守りのおかげかもな」
「う、うん…お兄ちゃんを絶対に守ってくださいって、お祈りしたから…」
「そうかそうか。可愛いやつめ」
「あうぅ…」
健気で可愛い美久の頭を撫でてやる。
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん…撫ですぎ…もう美久、子供じゃないから…」
「おっと、すまん」
「もう…気をつけてよね…それで、探索は、どうだった?危険なこととか、なかった?」
「大丈夫だぞ。安全マージンはしっかり確保していたからな。それよりも、美久。見てくれ」
俺はポケットから250万円を出して、美久に見せた。
「すごいだろ?今日一日で稼いだんだ!」
「ふぇ…?」
札束を見たキョトンとする。
束になった諭吉に触れて、手触りを確かめている。
だが、直後、ふっと可笑しそうに笑った。
「あははっ。お兄ちゃん、びっくりさせないでよ」
「あれ…?」
もっと驚くかと思ったんだが。
美久の意外な反応に俺は戸惑う。
「一瞬本物かって思っちゃったじゃん…こんなドッキリ、心臓に悪いよ…あはは。そんなよくできた偽物、どこで買ってきたの?」
「…ああ、そういう」
どうやら美久は俺が偽物を使ったドッキリを仕掛けていると思ったらしい。
わかるぞ。
これまでカツカツの生活をしてきたから、いきなりこんな大金を出されたら、現実だとは思えないよな。
「美久。ドッキリじゃないぞ。これは正真正銘本物だ。ほら、よく見てみろ」
俺は美久に一万円札を一枚束の中から抜いて渡した。
「え、嘘だよね…?ドッキリでしょ…?」
美久は恐る恐る一万円札を手に取って、真上にある電球にかざす。
どうやら透かしを調べているようだ。
「え…うそ…本物…?」
そしてようやく俺が持っている札束が偽物ではなく、紛れもない日本銀行券だと認識したようだ。
「そうだぞ美久。実は今日はボスモンスターっていう強いモンスターを討伐してな。その魔石の換金額がこれだけになったんだ。すごいだろ?」
「そ、そうなんだ…あはは…」
「あれ、美久…?」
美久の目がくるくる回っている。
足元がフラフラし始めた。
「大丈夫か…?」
「きゅう…」
「あっ!美久ーーー!!」
ふっと美久が目を閉じて、パタリと倒れた。
俺は慌てて美久を起こして揺さぶる。
「大丈夫か!?美久!?」
「…」
美久はショックで気絶していた。
その後、どれだけ揺すっても美久は目覚めなかったため、俺は蘇生も可能なほどの回復魔法を重ねがけした後に、美久をベッドへと寝かせたのだった。
美久は相当ショックだったのか、たっぷり2時間ぐらいは気絶したままだった。
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