第32話
ダンジョンから溢れたモンスターが全て討伐された後、周囲には壊された第七ダンジョンの入り口が塞がれたこと、モンスター・ハザードが終了したことなどがアナウンスされた。
駆けつけた探索者たちは、人々に賞賛されながら帰っていく。
俺も彼らに混じってそそくさと帰路についた。
「なんとかなったな…」
モンスター・ハザード。
噂には聞いていたが、俺の住んでいる付近の地域で発生するのは初めてだった。
無事にモンスターを掃討できてよかったと安堵しながら浮遊魔法で飛行していると、間も無く眼下にアパートが見えてきた。
俺は下降して、錆びた階段を登る。
「あ…」
「…っ…お兄ちゃんっ!!」
扉の前に誰かいる、と思ったら美久だった。
階段を登ってきた俺の姿を認めるなり、こっ
ちへ全力で走ってくる。
だが…
「ひゃあっ!?」
普段家にこもってて運動不足だからだろうか。
途中で足をもつれさせてバランスを崩す。
「おっとと」
そのままだと顔面から地面に激突しそうだったので、俺は慌てて駆け寄って美久を抱き抱えた。
「大丈夫か?」
「あうぅ…」
俺に全体重を預けた美久が顔を赤らめる。
「お、お兄ちゃん…おろして…」
蚊の鳴くような声で、ボソボソとそういった。
「大丈夫か?立てるか?」
「大丈夫…だからっ!」
「そうか」
美久を地面に立たせる。
すると、照れ隠しもあってか、美久はガバッと俺に抱きついてきた。
「無事で…よかった…っ」
「おう。約束通り、帰ってきたぞ」
ギュウウとしがみついてくる美久の頭を撫でてやる。
そうとう不安だったのか、小さな体が小刻みに震えていた。
「大丈夫。兄ちゃんはここにいるぞ」
「うん…うん…」
美久を抱きしめながら頭を撫でていると、震
えもおさまってきた。
「もう…大丈夫だから」
「おう。そうか」
美久を解放し、2人で部屋へ戻る。
美久は俺が無事で安心したのか、布団に入るなりすぐに寝入っていた。
俺はというと、一日であまりの出来事があったためになかなか寝れず、結局寝ついたのは明け方になった。
流石に今日くらいはいいだろうと、学校の授業には出なかった。
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