第99話 もたらされた情報①

「さて、これ以上シルヴィス君をからかうと後が怖いのでここまでにしよう」


 キラトは苦笑を浮かべつ言う。キラトとすればもう少し弄りたいというところであろうがそれは後にするという印象をシルヴィスは受けた。


「はぁ、それで頼みます」


 シルヴィスの声は心なしかゲンナリとした響きがあった。


「神の情報だけど、君達が知っている神はどれだけいるかね?」

「えっと、ヴォルゼイス、ディアンリア、シオル、シュレンですね。ヴォルゼイスとディアンリアは会ったことはありませんが他の二柱は会ったことあります」


 ルキナの問いかけにシルヴィスが答えるとルキナは一つ頷いた。


「なるほど神のトップクラスは知っているいうわけだ」

「他に八柱は斃しましたが……正直、名前は覚えてないです」


 シルヴィスの言葉にルキナは苦笑いを浮かべた。


「君達が斃した八柱は八戦神オクトゼルスと言って天界ではちょっとした実力者だ」

「え?」

「まさか……」


 ルキナの言葉にシルヴィスとヴェルティアは呆気にとられた声をつい出してしまった。声にこそ出さなかったがディアーネとユリも驚いた表情を浮かべた。

 ディアーネにいたっては竜皇国の報告で『下級神』と告げていたくらいだったのだ。


「そんな……誤った報告を上げてしまったわ」

「仕方ないよ。あのゲスな性格に、あの程度の実力なら下級神と勘違いしても仕方ないよ」


 ディアーネとユリの会話を天界の者達が聞いたら呆気にとらわれることだろう。


「ふふ、頼もしいことだ。八戦神オクトゼルスを一蹴したのはキラト達が居たからと言うわけではないのだな」

「まぁ、シルヴィスの仕込みがあったから楽に斃せたけど、それがなくても勝ったのはわかる」

「そうですね。シルヴィスさん達の実力からいえば仕込みがなくても勝てたでしょうね」


 キラトの言葉にリューベが応えるとムルバイズ達も頷いた。自分達が戦っても勝ったという自信はある。だが、それでも下級神と見なすことはしないだろう。これは実力の上下というよりも知識の有無というものだ。


「だが、シルヴィス君達があげた神達は八戦神オクトゼルスなどとは桁が違うよ」

「シオルとシュレンは強いのはわかりますよ。シオルに至っては戦ってもいないですけど、俺とヴェルティアが間合いにあっさりと侵入を許してしまいましたよ」

「だろうね。シオルはヴォルゼイスと互角の力量を持つと思ってるからね。いかに君達であっても意識の隙間を衝かれることもあるね」

「ええ、でもシオルクラスの実力者は四柱というのは嬉しい情報ですね」


 シルヴィスの言葉にヴェルティアも頷いた。


「そうですね~さすがにシオルさんクラスの神がゴロゴロといると面倒・・ですけどトップクラスと聞いて安心しましたよ。うんうん」

「だな」


 ヴェルティアの言い分にシルヴィスも即座に答える。シルヴィスは否定するだろうが、この二人は根本的に似た者同士といえるのだ。


「ヴォルゼイスの息子シュレンはシオルの弟子でね。その実力も相当なものだ。現段階でシュレンの実力はヴォルゼイスとシオルを超えてはいないけどそれでも相当近いはずだよ」

「シオルの弟子ですか……ということはシオルの剣と似てる可能性が高いというわけですね」

「そうなるね。基本はそうかも知れないけどシュレンはそこに自分ありのアレンジを加えているかもしれないよ」


 ルキナの言葉に全員が頷いた。この場にいるものは情報の大切さは理解しているがそれに拘りすぎることの落とし穴も理解しているのだ。


「ディアンリアはどうなんです?」

「あの女の戦闘力も相当なものだ。だが、それ以上にやっかいなのはその能力だな」

「能力……祝福ギフトを与える能力ですか?」

「そう……。あの女が一番厄介なのは祝福ギフトを与えることで短期的に強力な配下を大量・・に確保することができる」

「それはやっかいですね。祝福ギフトの上書きすることができるというわけですね」 


 ルキナの情報にシルヴィスは思案顔を浮かべた。


「魔王様、力関係は大体解りました。それで人間関係とかで何かネタ・・はないですか?」

「勿論あるよ」

「それ聞かせてください」


 シルヴィスがニヤリと嗤った。

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