第61話 タローvsジード(3)

前回、第60話を更新したのですが、少し長すぎて自分的にもう少し書きたい描写が書けなかったので、前回の60話をキリのいい所で分割して、新たに描写を書き加えた第61話を更新しました。

それに伴い、60話も修正しましたので、よろしければご確認ください。


度々申し訳ございません。


作者・紅赤

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青龍雷声セイリュウライセイ!」


「いいかげん目ぇ覚ませッッ!」


 全てを灰に化す蒼き雷撃と、AAA級モンスターを簡単に葬る魔力砲。

 両者ともに放った最強の一撃が激しくぶつかり合った――刹那


 一瞬の衝突音がしたものの、それ以降は何も起きなかった。


 植物にも地形にも、空にも影響はなく、静寂が場を支配する。


(ナンダ……ナニガオコッタ?)


 ジードは戸惑い頭の中を整理する。

 考えたのち、たどり着いた答えは――


 であったが故、したということ。


「バカ、ナ――」


 その結論にジードは動揺した。


「アリエナイ……ワガイチゲキガ……ニンゲンゴ、と、きに……」


 暴走状態とはいえ、この結果は予想外過ぎた。

 だが、それは思わぬ奇跡を起こす。


 事実が衝撃的過ぎて、元の人格がのだ。


 そして一瞬とはいえ語尾が正常に戻ったのをタローは聞き逃さなかった。


「――なんだよ、戻りかけてんじゃん」


 空中で身を翻し地面に着地すると、タローは怠惰の魔剣ベルフェゴールの形状を変化させた。

 その形は――"釣り竿"。


「もう一押し、だな」


 タローは状態をそらしてから、勢いよく釣り針のついた糸を投げた。

 大きくアーチを描きながら向かう先は――龍の口。


「――ッムグォ!?」


「よっしゃ!」


 見事に針はジードの口の中へと入りこむ。

 それを確認すると、竿を思い切り引いた。


「むっぐ! ……ク、クソッ!!」


 タローの馬鹿力により地面へと引っ張られる。

 ジードは糸を千切ろうと大きく暴れるが、切れる気配は一切なかった。


(クソッ! ココハ、ニゲーー)


 余裕はない。

 屈辱的だが、逃げることに専念してこの場から去ることに全力を注いだ。

 だが――


(ウ、ウゴケナイ!?)


 ジードがいくら逃げようとしても、タローの凄まじい力がそれを許さない。

 地上ではタローがジードに背を向け、釣り竿になった怠惰の魔剣ベルフェゴールを上段で構えていた。


「――さっすが、活きがいいなぁ……」


 タローの後ろでは釣り糸が右へ左へと暴れている。

 これだけ暴れたら身体をもっていかれてしまいそうだが、タローは攻撃力は測定不能の怪物だ。

 が抗えるものではない。


「――お前さ……回るの好きだったよな?」


 タローはニヤッと笑うと、今度はハンマー投げするかのようにその場で回転した。


「――ヌオオオオ!?」


 すぐに残像が出るほどの超スピードに達したタローと同じスピードでジードも回っていく。


(ワ、ワレ、イジョウニ、ハヤイ!?)


 それは自身の自慢の速さを、遥かに上回る回転スピードであった。

 そのスピードはジードが体感したことのない苦痛を与え、さらに追い詰めていく。


「メ、メガ、マワッ――」


 あれだけ回転技が多いジードであったが、

 回転ことに慣れていても、回転ことには全く耐性が無かった。


 超高速回転により、ジードの身体に強烈なGがかかり三半規管や脳、内臓がひっくり返っていく。

 そうして内側からボロボロになったジードは、とうとう限界が訪れた。


(マズイ…チカラガヌケテ――)


 その瞬間とき、ジードの身体から完全に力が抜けた。


「やっと弱ったな……丁度いい、デッカイ魚は――」


 タローはその隙を逃さず、回転の勢いそのままに、今度は思い切り、釣り竿を振り下ろした。



「一本釣りに限る」



 ジードは、破壊音を鳴らして勢いよく地面へと叩きつけられた。

 それも、力の抜けた状態。受け身もまともにとれない状態で。


「グァ――」


 タローの剛腕で打ち付けられる衝撃とダメージは相当なもの――そのはずであった。


 しかし、あまりの衝撃ゆえに、ジードは意識を完全に取り戻した。


 暴走中のことはうっすらしか覚えていない。

 肉体的なダメージと、暴走直後による精神的疲労が両方襲ってきた。


(そうか、終わったのか……)


 負けたことはすぐに理解した。しかしそんなことなど、どうでもいいと思うほどの傷である。

 もう意識を手放そうとした……その矢先――


 満身創痍だというのに、その姿が目に入った途端――ジードは動き出していた。



「――ランッ!」

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