第23話 少年の夢
どーもどーもタローでございます。
前回はカイエンさんにかっこよく休んどけなんて言って、20万に増えたワイトを倒そうとしていました。
ところがどっこい。
タマコにこの国を調べようと言われ、結局何もせずワイトを放置することになりました。
大見得切った手前すごくはずかしいです。
20万倒して2000万Gを貰おうと思っていたのですが、台無しになりました。
ですが俺は女の子に弱いのでタマコの言うことを聞くことにしました。
はたして俺はちゃんとデメテール国のことを調べることができるのでしょうか!
では本編スタート!
***
「勉強なんてやってられっかよ」
はい。
というわけでのっけからちゃんと調べられない主人公の姿からスタートしました。
「俺の知力100だぜ? 頭使うのは向いてるやつにやらせればいいんだよ」
できないことはやらない、できることをやる。
タローの数ある座右の銘の一つである。
その男は現在、観光地とは離れた場所を歩いていた。
『表には奇麗なところしか見せんのがやり口としての常套手段じゃ。
観光地という表舞台から遠ざかれば、何かわかるやもしれん』
そう言ったのはタマコである。
ワイトとは動く死体。
倒せばその体は無に帰すのだが、倒せば増えるという奇妙な現象が起きていた。
タマコは現在その原因を掴むため、特殊な魔法でこの国を調査している。
その間にタローは自分の足で見て聞いて探るはずなのだが……
「俺が寝てる間に仕事できる身体だったら最強だよな。寝て起きたら金を稼いでるってことだし」
ブツクサ言いながら街を練り歩くその姿は、どの誰よりも不審者であった。
「寝ながらモンスターを倒す……出来たら便利だな~」
「寝ながら出来る技ってどんなの?」
「そうだな~……例えば雷の呼吸・霹靂いっs――」
突然自分以外の声が聞こえたので後ろを振り向くと、小さい男の子が不思議そうにこちらを見つめていた。
「…………やぁ少年、なにかようかい?」
「お兄ちゃんは強い?」
「どーだろーね。そこそこじゃない?」
「お兄ちゃんは冒険者なの?」
「まー…………バイトだけど」
「バイト?」
「バイト」
「…………?」
「……………………」
「……………………?」
「……………………冒険者だよ」
「ッ! やっぱり!」
少年はタローが冒険者だとわかると、表情パァっと明るくさせた。
その純真無垢な面差しに、タローは急に自分がバイトなことに恥ずかしくなる。
子供の純粋さは時に心を抉るのである。
「お兄ちゃん! 僕のお願いきいてくれない?」
「え?」
「僕、どうしても頼みたいことがあるの!」
少年は先ほどの明るい表情とは打って変わり、今にも泣きだしそうな顔をしていた。
「僕たちを……助けてほしいんだ」
***
その少年――アレンに案内されたのは観光地から離れたところにある孤児院。
建物は古いが手入れが行き届いているのか、汚いとは思わなかった。
アレンの先導で中へ入ると、中庭で子供たちが遊んでいた。
だが妙に人が少ない気がする。
遊んでいるのは5歳くらいの子供4人だけだ。
タローが訝しんだのを察したのか、アレンは告げる。
「……墓地でワイトが出始める前、ここで3人が死んだんだ」
3人は突然死で亡くなった理由がわからなかった。
当時は急な不幸ということで終息したが、一緒に遊んでいたアレンは酷く悲しんだという。
しかし、悪夢はそこでは終わらなかった。
その1週間後にまた一人、その次の日にまた一人と犠牲者は後を絶たなかった。
原因は全て突然死。
それはこの孤児院だけでなく、国にいくつかある孤児院でも同様のことが起こっていた。
人々も悪魔の呪いだと恐れ、孤児院には近づくものがいなくなってしまったらしい。
「今いる大人は園長一人だけ。でも一人じゃ手が回らなくて、この前体を壊して入院しちゃったんだ」
アレンは目に溜まった涙を拭うが、悔しさなのか恐怖なのか止めどなく溢れる雫が頬を濡らした。
「他のみんなも怖がって外に出てこないし、年少の子も段々みんなが死んだことに気付き始めてる……もう、ボクもどうしていいかわからないんだ!」
アレンは嗚咽を漏らした。
救いたくても救えない。
助けてほしくても助けてくれない。
何もできない悔しさ、迫る死神の足音に恐怖する日々。
それらを耐えるには彼らはあまりにも幼かった。
涙が止まらないアレンの頭をタローは優しくなでた。
「少年は夢があるかい?」
「……?」
「大人になったらやりたいこととか、なりたいものとか」
タローの問いかけに少し考えてから「冒険者になりたい」と答える。
答えを聴きタローは笑った。
「だったら今のうちにたくさん食べて、鍛えて、勉強しとけ。それ以外は心配しなくていい」
「お兄ちゃん……」
「お前の依頼、受けたぜ――お前らを必ず助けてやる!」
タローの言葉にアレンはまた涙を流した。
だが、その涙は恐怖や不安ではない。
それは、感謝と喜びの雫だ。
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