第128話 人間の男などこちらから願い下げ

あらすじ 地中にも魔女はいた。


 大蛇が穴を掘り、爬虫類女が僕を引っ張る。


 ピシキシ。


 割れては凍る。


 そんな透明な氷の中に閉じ込められ、引きずられる毎に滑らかになっていく景色。泥忍法で潜っても暗黒の世界だったのに、透明に輝く鱗とサファイア色の血管を見せつける大蛇のおかげで明るかった。


 しばらくして広い空間に出る。


 パキン、と氷が割れて、僕は外に出された。


「逃げようなどと思うな。カンダ・シン」


 大蛇は僕に巻き付いて言う。


「……うう」


 寒くて歯をガチガチ言わせるぐらい震えていた。凍りつかないというだけで、動ける気がまるでしない。蛇が普通に日本語を喋っている違和感さえどうでもいいぐらい、気力が死んでる。


「ニドヘグぅ。おなかへったよぉ」


 爬虫類女は大蛇と僕を一緒に抱きしめた。


 ぬるりとした肌だった。


 透明な氷を纏って全裸、その全身はつるりとした灰色で、関節部分は凍らないような液体なのか妙なぬめりを帯びている。


「ここ、おいしそうだよぉ?」


 そして僕のちんちんに長い舌を伸ばす。


 性的な意味じゃないと思う。


「……」


 そうであって欲しいと思ってる。


 おっぱいもおしりもあるけど、蛇と蛙の中間みたいな顔と髪のない頭を見てると興奮できないのは確かだった。この相手で射精してしまったらなんとなく屈辱な気がする。


 失礼かも知れないけれども。


「鳩の卵の連中も地中に入れない訳じゃない。サザンカの炎も、こちらの通った道を見つければ届くだろう。あれは危険だ。魔力を剥がされる」


「おなかへったよぉ」


「……わかった」


 大蛇はそう言うとその長い胴体の一部を開いた。開いたというか透明な胴体に不意に見覚えのある器官が現れたというのが近いかもしれない。


「や」


 僕は首を振っていた。


 女性器。


 見慣れすぎるほどに見慣れたもの。


 間違いなくそれは人間のそれを模している。


「コモロの頼みじゃなければ人間の男などこちらから願い下げだ。気持ち悪い。だが、タイホンでもある。人間にそれが埋め込まれたのだから、仕方がない」


 大蛇はずるりと巻き付いた身体を動かし、僕のちんちんとその出来たて透明な女性器を合わせていく。滑らせて挿入。少なくとも人間の男とセックスするのははじめてじゃないようだ。


「ひっ」


 身体の芯から凍りつく感覚。


「我慢せずに出せるだけ出せ、それが早く終わらせる方法だ。ほら、これがいいんだろう?」


「……」


 よくない。


 冷たい女性器なんて。


 ただ、絡みつくそれに抗わなければ射精してしまうのも確かだった。忍魂じゃなく、心臓が僕のちんちんを生かすために血を激しく送っている。それはコントロールできなかった。


 ぐぷぐぷ。


「気持ち悪い。だが」


 大蛇は透明な肉体に入ってきた白濁を見つめて言った。それは不思議な光景だった。自分の精液が発光している。意味がわからない。


「とてつもない力だ……」


 ぎゅぎゅ。


 液体だった白濁が丸くなり、外に広がっていた光が押し込められるように小さくなっていく。それは大蛇の胴体を通っていく。


「おむっ」


 口から吐き出された。


 見たことがある気がする。


 卵。


「いただきまーすぅ」


「!?」


 爬虫類女が流れのままにそれを丸呑み。


「んく」


 顎より、喉より大きな卵に見えたが、口を手で押さえて強引に飲み干した。潰した様子もなく、それがおなかにぼとんと落ちるのが爬虫類女の身体でわかる。


「どうだ」


 大蛇は冷ややかに尋ねた。


「おいしいよぉ?」


 うれしそうに爬虫類女が答える。


「なら良かった」


「うん、逃げよっか」


「……」


 ちんちんを挿入されたまま放置される僕はどうしたらいいのかわからない。ただ、そのまま移動がはじまり、僕は先導する爬虫類女について行くしかなかった。抵抗できないのだ。


 凍らされたらちんちんが折られる。


 言うまでもないことだ。

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