第52話 e忍者スーツ
あらすじ 肉体を男に戻すにはちんちんから。
どうせ服は着てない。
「わかりました! 薬ください!」
僕は投げやりに言う。
「では、手を出してみるの、です……へへ」
「これでいいですか!」
僕は座ったまま掌を上に向けた。
「はい」
ぽとととと。
オオクス博士の声と同時に派手な赤い丸薬が五つも落ちてきた。怪しげな薬をこんなに飲めと言ってる。わざわざ薬で殺しはしないだろうけど、気分がいいもんじゃない。
「使用に関しての注意なの、ですが……これは忍法を強引に押し返す手法であり、解除するものではありません。勃起している間は男に戻れる、というもので、萎えればおそらく女に戻ってしまう、でしょう……」
「……ちょっと待って」
言われたことが頭の中で整理できず、僕は考え込む。そうなってる間しか、男に戻れないってことは、男でいるあいだはそうなってる?
「不便じゃん」
こう言うのが正しいのかわからなかったが、結論としてはそうなった。そうなることが男の生理現象なのは知っているが、そうなっている間は著しく行動が制限される。困ったことだ。
「その通りなの、です……自分は女ですが、そう思います。なので、こういったものを用意しました。e忍者スーツです」
ぽん。
鎧を着たマネキンが目の前に現れた。どうでもいいけど、ものすごくワープを便利に使っている。黒い鎧は身体の急所をちゃんと守ってくれそうで、結構カッコいい。ただ、重たそうだ。
「良い忍者スーツなんだ……」
確かに着たらちゃんと忍者には見える。
「エレクトです」
「……?」
「クノ・イチ氏のスーツをキミの仕様に改良したものになります。忍者として行動するにあたって、防護と生存に特化、さらに最新の技術を注ぎ込んで、忍法を上回る装備を搭載したの、です」
「博士」
黙ってみていたシズクさんが口を挟んだ。
「シンくんに最新技術を持たせるのはセキュリティの観点から承認できません。先日の適性試験で彼は七つ道具を悪用して……」
「悪用してんの、どっちだよ」
僕はつぶやいた。
「な」
「子供強引に眠らせて閉じ込めて、冷凍睡眠か薬飲んで男に戻るか選ばせて、悪用してないの? 大人ってそうやって自分のことを棚に上げて」
「私は、巻き込まれるかもしれない一般市民の」
シズクさんが顔を真っ赤にした。
「その点も考慮してあるの、です」
言い争いになりそうなところに割って入る。
「スーツの内部を見るの、です」
「……なか?」
僕は立ち上がってマネキンの周りをぐるっとっまわる。どうやら上下は一体になっていて、背中から着る形のようだ。頭巾とマスクがついていて顔も見えなかったが、背中を開いてみるとマネキンは透明で、内側が見える。
「股間に注目です」
「変な穴がある」
「ペニス入れです」
「……」
僕は思わず耳を塞いだ。
「説明した通り、キミが男でいられるのは勃起状態のみなの、です。しかしそこは急所でもあります。外側の鎧だけでなく内側でも安全に固定されるように、そして同時に個人認証用のキーとしての役割も果たします。薬を飲んで、男に戻ったらまず挿入して認証してください。これによってスーツを奪われてもペニスが一致しない人間には使用することができなくなります。さらに」
スピーカーの音量を上げて聞かせてきた。
「一気に色々言わないで!」
理解したくないことだってあるんだ!
「安全装置として射精すれば女に戻ってしまうことを利用して、外部でその使用をコントロールする機構を組み込みました。所謂、オナホになります。監督役が制御装置を持ち、場合によっては強制的に男性であることを解除できます」
「なるほど……考えられてます」
シズクさんは頷いていた。
「なるほどじゃない!」
僕はいい加減にして欲しかった。
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