鋼鉄製ニート

 肉体強化には成功した俺だったが、戦闘センスに関しては相変わらず何故か向上しなかった。


「こういうのは慣れが一番必要なんだ。クロスも父さんとの模擬戦をこなしてればいずれは身につくもんさ!」


 初めのうちは父さんも楽観視していたらしく、励ましてくれたのだが、最近は


「クロス...お前前世で悪行を積みすぎたとか、ないよな?」


とかとんちんかんなことを言い始めた。まあそれくらい俺は悪い意味で異常だったってことなんだろうなぁ。


 そんなことでまだ討伐者として旅に出るレベルではない俺は鍛錬を積みつつ、両親の畑仕事を手伝いながら生活している。


 討伐者として活動し始めるのは、ほとんどが15歳前後からだ。

 俺も15歳になった時、一刻も早く討伐者になろうと思ったのだが、まだ力不足だと父さんに止められ、母様も涙ながらに止めるものだから、17歳になった今もこうして留まっている。

 ここまでお世話になった両親には、不安なく元気に俺を送り出して欲しいものだしな!


 そんなわけで、未だ無職である俺を「穀潰し」やら「筋肉オバケ」やら言って嘲る村人も現れた。

 日々の鍛錬によってメンタルも鋼になった俺は全く気にしていないのだが(むしろ後者は俺の筋肉を称えているような気すらする)、このままでは両親が肩身の狭い思いをするだろう。何が俺が討伐者として通用するという証明ができれば独り立ちできるのだが...


 そんなことを考えながら伐採した木を背負って村に運んでいた時のことだった。


 「誰かぁぁ!助けてぇぇぇ!」


 甲高い悲鳴が聞こえた俺は、反射的にそちらへと駆け出した。

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