空#2
篠原花玲が振られたという噂が学校中を駆け回っていた。
水瀬は高校帰りの電車内で扉に背を預け揺られながらその事について考えていた。
その電車の同じ車両に大岩はいる。水瀬も大岩も同じ時間に同じ車両に乗ることが習慣化しているのでよく被るのだ。しかし会話を交わしたことは無いし大岩は水瀬に気づいてすらいないのかもしれなかった。
チラリと大岩の方を見ると唇の片端を少し釣り上げてニヤリと笑っていた。読んでいる小説で面白いシーンでもあったんだろう。でもこうしてみると大岩は割と顔立ちは整っているようだ。男前って感じ。
花玲と仲が良い水瀬は知っていたが、噂の出処は花玲ではない。ではどこなのかと言えば詳しいことは何も分からないのだが、花玲は大岩が言いふらしたに違いないと憤怒していた。
水瀬は大岩という人間について同じクラスなだけで殆ど知らなかった。いつも1人でいるという印象しかない。しかし、今回の件でひとつ理解したのはどうやら大岩レオは空気の読めない大バカ野郎だということだ。
花玲は恥をかかせた大岩を許さない。すでに、過去に標的にされ不登校になったあいつの時のように、イジメが始まっていた。
水瀬は怖かった。大きな力に流されることが。抗えない自分の弱さが。
もうすぐ卒業の時期だ。このままでいいのかと自分に問いかける。弱いまま、なんの成長もなかった高校時代でいいのか。一生このまま長いものに巻かれて狡く生きていくのか。
水瀬はあの男のことを思い返していた。高校に入学してすぐの事だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます