桜#5
「大岩は第1志望どこなの?」
先日、一悶着あったのにも関わらず真凜は普段と変わらない様子で話しかけていた。いや、あんなことがあったからこそ平静を装っているんだろう。
「俺はT大学」
大岩が名前を上げたのは県内にある私立大学だった。通っている高校から毎年一定数進学している学校でもある。偏差値でいえば大岩ならまず受かるだろうといったレベル。
「あぁ、あそこ人気だよね」
「お前は?」
「…あのさ、ずっと思ってたんだけどそろそろお前呼び辞めない?」
真凜は憂いを帯びたような表情で言った。お前呼びを辞めるのは大岩とてやぶさかではないのだが。
「俺、お前の苗字を知らない」
「…あ、水瀬真凜です。よろしく」
水瀬はいつもと違う悲しげな笑みを浮かべた。
「じゃあ水瀬さんはどこ大志望なの?」
「私はS大学」
水瀬は少し鼻を広げて得意げに言った。というのも水瀬の挙げた大学は有名な国立大学だった。うちの高校から一般入試で受かったなら誇れるレベルだ。
「頭いいんだな」
「まぁね」
否定しない所に腹がたった。
「篠原ちゃんはどこ目指すんだろうね」
「知るか」
「まぁ篠原ちゃん、頭の方ははっきり言って悪いからね。私たちどっちかと被ることは無いでしょう」
「篠原が頭悪いって初めて知った」
水瀬はしかめっ面で「あの子自分の弱点は基本的に人に晒さないからね」と言った。
大岩はふと思った。今学校中が篠原が振られたというニュースを知っている。結果大岩は学校中から攻撃を受けている訳だが、何故ここまで噂は広まったのだろう。男に振られたなんてのはそれこそ弱点だろう、篠原は積極的に話したがらないはずなのに。
それほどまでに俺は篠原に恨まれているのかと大岩はゾッとした。
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