第43話 キミが居るべき世界
「アタシは姫様にも、笑顔になって欲しいです……」
リムのその言葉に、
「分かったわ」
とサヤちゃんは
(良かったよ)
わたしは
だが、サヤちゃんは
「サ、サヤちゃん?」
「
わたしは訳が分からなかったのだが、言われた通りに動こうとした。
だが、動かない。
――
「それは少し……困りますね」
と現れたのは――多分、トキトー先輩だ。
今のわたしは振り向けないので、声しか分からない。
(いえ……こんなところに現れるのだから、先輩の正体は――)
「【怪異】だったの!」
――ううっ、
「気付かれている――と思ったのですが、鈍いようですね」
「その
「おっと、時間を止めているのですが……動けるのですね」
そちらの……夕月さんといいましか?――と【怪異】は言う。
「彼女も意識があるみたいですし――」
「
サヤちゃんの言葉に、
「そうでもありませんよ――本来なら、そこで
どうにも今回は、想定外の事が多過ぎます――【怪異】は溜息を
「でしょうね」
とサヤちゃん。
(わたし、また
トキトー先輩は、
「まさか、契約の上書きをされるとは……」
と
再び、刀が
(サヤちゃんは動けているみたい……)
――でも、どういう事だろ?
リムやヒナタちゃんは静止している。
(そういえば、時間を止めている――って言ってたよね)
理屈は良く分からないが、現状は理解した。
――どうにかしなくちゃ!
とはいっても、自分に出来る【術】は限られている。
後は助けを呼ぶくらいだ。
――助けて!
うーん――とわたしは念じる。すると、
――きゅるるるるぅ~。
お腹が鳴った。
「緊張感がないのね……」
とサヤちゃん。顔が見えなくても、呆れているのが分かる。
「サヤちゃんこそ、大丈夫なの?」
そんなわたしの問いに答えたのは、【怪異】であるトキトー先輩だった。
「彼女は、キミ達を
とは言っても……ワタシも時間は掛けたくないので――と告げた。
距離を空けたのだろう。気配が遠ざかる。
同時に――パチンッ――と指を鳴らす。
「おっと!」
わたしは動けるようになったので、思わず声を上げてしまった。
リムやヒナタちゃんは状況を理解していない様子だ。
「
サヤちゃんの言葉で、彼女が身に着けている
わたし達の上に覆い被さるように、巨大な何かが降って来た。
衝撃と共に、周辺の建物が倒壊する。
▼▲▼ ▼▲▼
(いったい……
「ヒナタちゃん、大丈夫?」
わたしはしがみ付いていた彼女に尋ねる。
周囲は倒壊した建物から出た粉塵で良く見えない。
「うん、姫様が守ってくれたよ」
とヒナタちゃん。
(そういえば、
「では、脱出しましょうか?」
わたしの背後で男性の声がした。トキトー先輩だ。
「へ?」
思わず、間抜けな声を上げてしまうわたし。
次の瞬間には、黒い
(これって、シキ君が使っていたヤツ⁉)
サヤちゃんの声が聞こえたような気がしたが、
「ようこそ、我々の根城に――」
とはトキトー先輩――いや、レージだ。
「お姉ちゃん……」
ヒナタちゃんだ。
わたしにしがみ付いていたから、一緒に連れて来られてしまったようだ。
大丈夫だよ――小声で告げた後、
「わたし達をどうするつもり?」
と質問する。
「簡単な事ですよ」
彼が答えると、数人の男女――それ以外の者も姿を現す。
その中には『
でも、それよりも、わたしが気になっていたのは――
(やっぱり、ルカ君だ……)
どういう訳か、紅間に付き
「夕月さん、キミには――ワタシ達の仲間になって欲しいのですよ」
そう言って、彼は両手を広げた。
(絶対、嫌なんですけど……)
断ろうとしたのだが――パリンッ。
「外を見てください」
パリンッ、パリンッ――何かが割れる音だ。
わたし達は言われた通り、窓から外を見ると、
「空が……割れている?」
青かった空には
そして現れたのは――
「紅い空……」
かつては違和感なく、それが当たり前だと思って暮らしていた。
本来なら――
でも今は――本当の空を知ってしまった今は――不気味でしかない。
「もう一度問いましょう――ワタシ達の仲間に……本来、キミが居るべき世界に戻りませんか?」
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