第51話~ノドカサイド~

中学に入学してすぐの頃、あたしはとある交流サイトにはまっていた。



それはオカルト好きな若者たちが集まるサイトで、毎日色々な怪奇現象、都市伝説が書き込まれている。



あたしはそのサイトの常連の1人だった。



と言っても、自分から発言することはなくて、もっぱら読んでいるだけだけれど。



《匿名希望:今日、あたしの学校で幽霊見たって子がいたよ!》



《名無し:まじで!? どんな幽霊?》



《匿名希望:両足のない女の子がトイレから出て来たんだって!》



《名無し:なにそれ怖い!》



《コウダイ:俺もそういう話大好き!》



それは突然の書き込みだった。



みんな匿名希望や名無しと言った名前を使い、ハンドルネームも使っていない中に現れたコウダイの名前。



一瞬、交流サイトのSNSが止まった。



みんなコウダイへ向けてどう反応するか考えているように思えた。



《ノドカ:はじめましてコウダイさん。あたしも怖い話が好きなので是非会話に混ぜてください!》



それは止まってしまった会話を元の流れに戻すための書き込みだった。



《コウダイ:ノドカさんはじめまして! 俺の中学では今、七不思議がはやってるんですよ!》



あたしとコウダイの出会いは、ここから始まった。



それからというもの、あたしとコウダイの2人はほとんど毎日オカルト系交流サイトで会話するようになったのだ。



といっても、もっぱら怖い話ばかりだし、他にも会話に入ってくる人は沢山いた。



ただ、『匿名希望』や『名無し』が続く中で、あたしたちの名前だけが浮きあがっているように見えた。



最初はそれが恥ずかしかったけれど、コウダイと会話を続けていると徐々に嬉しくなってきた。



不特定多数の人と会話をしていても、まるであたしとコウダイだけが同じ空間にいるような感覚になれたからだ。



《匿名希望:今度このメンバーでオフ会しませんか?》



それは突然の誘いだった。



このメンバーというのはサイトの常連客であるあたし、コウダイ、匿名希望、名無しのことだとすぐにわかった。



《名無し:いいですね! 肝試しオフ会なんてどうですか?》



《コウダイ:賛成! 実際に幽霊が出たら盛り上がりそうですね!》



あたし以外の全員が参加する気満々だ。



あたしはその書き込みにどう反応をすればいいのかわからなかった。



いい人たちだという印象はあるものの、全員ネット上で知り合った人たちだ。



そう簡単に会ってみて大丈夫だとは思えなかった。



《コウダイ:ノドカはどうする?》



コウダイからの問いかけに、心臓がドキンッと跳ねた。



コウダイと会うことができるかもしれないと、胸がときめく。

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