第48話

「うん、そうだね」



「それって本当に大丈夫?」



どうやらコウダイくんはまだ、全部の七不思議を見ると死ぬ。



という噂を信じているようだ。



あたしはコウダイくんに手を貸してもらいながらフェンスを乗りこえた。



「あたしなら大丈夫だよ」



あたしはそう言ってブレスレッドを見せた。



安物だから月明かりを浴びても輝いていない。



しかし、コウダイくんはそんなこと気にしている様子はなかった。



「それで悪霊を跳ね返すとか!?」



と、テンション高く聞いてくる。



あたしは適当に返事をしながら前を歩く。



ブレスレッドを付けた右手を突き出し、霊気を感じる演技をしながら……。



そして体育館に到着する直前だった。



あたしの足になにかが絡みつき、体のバランスが崩れてしまった。



「キャア!」



短く悲鳴を上げて前のめりに倒れ込む。



咄嗟に両手を突き出したから、手のひらをすりむいてしまった。



「ミキコちゃん大丈夫?」



後ろからついてきていたコウダイくんがすぐに手を差し出してくれる。



「痛ったぁ……」



あたしは顔をしかめて起き上がる。



さっきここへ来たときはなにもなかったのに、一体なんだろう?



振り向いて確認してみても、そこにはなにもなかった。



「血が出てる」



言われて確認すると、すりむいた掌から血が滲んできていた。



「これくらいなら大丈夫だよ」



あたしはそう言い、ハンカチを取り出して傷口に押し当てた。



まだ少し痛むけれど、これくらいなら大丈夫そうだ。



コウダイくんは幽霊を見るのを楽しみにしているし、早く行かなきゃ。



「体育館はこっちだよ」



あたしは気を取り直して歩きだしたのだった。


☆☆☆


体育館の近くまで来たとき、その音は聞こえてきた。



キュッキュッキュッ



ダンダンダン



それはバスケットボールをドリブルしている音だ。



体育館の床とシューズがこすれあう音もする。



コウダイくんがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてきた。



あたしはそっと体育館のドアに手をかける。



ダンダンダン



キュッキュッ



「カギ、空いてるのか?」



「大丈夫だよ」



あたしは頷き、ドアを開けた……。

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