第79話養母晃子の死 それぞれに連絡 

マルコ神父が最初に電話した相手は、本多佳子、つまり元の祖母だった。

養母田中晃子の殺害や、実家が極道であることを聞き、かなり驚いた様子。

「パリ・・・となると細かい段取りはわかりかねますが、お葬式とか、相続とか・・・」

「田中晃子の夫にも連絡を取って見ます」

「とにかく元君では対応が出来ないでしょう」

「それをしながら、今日の午後には、鎌倉の教会に出向きます」


マルコ神父が、本多佳子との電話を終え、シスター・アンジェラと中村に、その旨を告げていると、中村にも連絡が入った。


連絡をして来たのは、音楽雑誌社の杉本だった。

「田中晃子の事件を、パリの知人に聞きました」

「信頼できる筋で、系列の新聞社のパリ支局の人です」

「ところが、警察当局や大使館では菊池晃子の事件になっています」

「つまり、離婚状態で田中さんから籍を抜いています」

「ただ、表面的に、日本の田中夫妻で演奏活動しているだけとのことです」


中村も杉本からの電話内容を、全員に話す。


シスター・アンジェラ

「そうなりますと・・・元君が、直接に、どうのこうのは・・・」


マルコ神父は、少し考えた。

「ただ、外務省から連絡が入るかもしれない」

「しかし、千歳烏山の家に元君はいない」

「元君は、鎌倉小町を歩いていて、スマホを買ったばかりで」

「いずれにせよ、春麗に連絡して、早く教会に戻します」


中村は、自分の手帳をめくり、顔をあげた。

「外務省に大学の同級生がいて、課長になっています」

「元君の実状を連絡します」


マルコ神父とシスター・アンジェラが、大きく頷くので、中村は早速連絡を始めている。

また、マルコ神父も、元の実父の山岡に電話をかけている。


春麗に連絡を取ったのは、シスター・アンジェラだった。

「春麗、申し訳ないけれど、すぐに戻って欲しいの」

「事情は教会で言います」


春麗は、シスター・アンジェラの声に、「ただならないもの」を感じた。

「何か、事件でしょうか」

「わかりました、このまま」


それを元と美由紀、奈穂美にも伝えた。

元は、春麗の表情に、何かを感じたらしい。

「困ったこと?」


春麗は、「うん」とだけ、「急いで帰って欲しいみたい」

美由紀と奈穂美も、頷いたので、そのまま教会に戻ることになった。



シスター・アンジェラが次に電話をしたのは、元の実母、本多美智子だった。

「本多美智子さんですか?」

「かつて、高輪教会の施設にいた、シスター・アンジェラです」

「元君を、今、鎌倉の教会で保護しています」

「どうしても、お話したいことが」


本多美智子は、少し潤んだ声。

「はい・・・元がお世話になりまして・・・」

「私も、母から話を少し前に聞きまして」

「あの・・・今日・・・日本に」

「今・・・都内に入って」


シスター・アンジェラ

「わかりました、では・・・お越しください」

「どんな形になるか、わかりません」

「元君の顔を見てあげてください」


マルコ神父も、元の実父、山岡との話を終えた。

「山岡さんも、今夜の夜、日本に着くそうだ」

「そのまま、鎌倉の教会に来るようにと」

「山岡さんも承諾した」


中村は、まだ電話が長引いている。

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