第40話

「笑顔を作れ!」とマティーから言われた。


「マーぷ、もう大丈夫。」と口角を上げて、笑顔を作った。


「ケイト、僕は、もう少しこの村に、いるよ。何かあったら、相談に来るんだよ。」


教会の横に学舎を作り、その上には、宿泊施設も併設されていた。

マティーが、神父として在任中にバルフォアボール辺境伯に頼んで、建設してもらった施設だった。


この近くの視察の時には、バルフォアボール辺境伯も使用されている。


この村の大人達の健康検診の為に、バルフォアボール辺境伯や、医師関係者などの為に、宿泊施設を全て使いっている。

宿泊施設を使用している時の対応は、アビーとレスの担当なのだが、村の女性が手伝う事になっている事をサリーから聞いていた。


マティーと別れ、教会からの帰り道で、サリーを見かけ、走り寄った。

「サリーさん、ちょっと待ってください。」


「ケイトちゃんも帰り?」


「はい、あの〜、サリーさん、ありがとうございます。」深々と頭を下げた。


「どうしたの?頭を下げて、何?」


「聞きました。マティー様から、全てを、お母さんの為に本当にありがとうございます。村長をはじめ、村の人たちに、どうやってお礼を言えばいいのかわかりません。」


「やだね〜、この子は、ほら、私たちも、健康検診をしてもらってんだから、お互い様さ〜ね。気にしなくていいよ。

その分、お母さんに、してあげるんだよ。」と言って、頭を撫でた。


次の日、レスは仕事を休む様に言われていた。

「お母さん、ケイトは、マティー様の処に行ってくるね。

お母さんは、今日は休みなんだから、ゆっくり寝ててね。

お昼も準備したの。たまには、一日中、ごろごろしてよね。」


「はいはい、忙しいのに休みを貰っていいのかしら?他の人が忙しくなるのにね。」


「別にいいんじゃない。ギル村長にも考えがあるんでしょ。

お母さん、マティー様の処に行ってくるね。」

思いっきり、明るい声で言った。


あたしは、マティーの処に向かった。

それは、検診の結果を知りたかったから、何もなく、ただの過労だったら、ゆっくりと身体を休ませれば良い。

もし、病気だとしら、でもマティーだった、教えて貰えるかもしれないと思ったからだ。


教会に着くと、アビーから、宿泊施設の会議室に向かうように指示をされた。


会議室のドアの前に着く。


トントン、ドアを叩くと、

「入ってもいいよ。」男の人の声が聞こえる。


「失礼します。」

ドアを開け、一礼をし、部屋の中に入ると、

そこには、バルフォアボール辺境伯、検診をしてくれた、医師、ギル村長そして、マティーが居た。


「ケイト、ここにかけて。」マティーの横の席を指した。


「はい、失礼します。」一礼をし、マティーの横に腰をかけた。


「マティー、その子を呼んでいたのか?」


「いや、僕の教え子だよ。来る事は、解るよ。」


健康検診をしてくれた医師が、

「辺境伯様、宜しいでしょうかね。今回の結果を話しても。その子は・・・・」


「大丈夫です。彼女の子供です。」ギル村長が医師に向かって、言った。


「今回の、村の人の結果は、一人を除いて全て、健康です。

これ程、健康な村は、ないでしょう。」とはっきりと、言う。


「一人以外・・・・」小声で呟いた。

その声が聞こえたのか、マティーがそっと手を握ってくれた。


その医師はロバートで、マティー達よりも少し年配だった。


「ケイトさん、君のお母さんは、全身の内臓に黒い点が沢山あるんだ。多分、身体が痛いはずだよ。日に日に痩せていくのは、その黒い点が原因だよ。

すまないけど、薬では、どうにもならない。出来るのは、痛みを取るくらいだ。

君に聞くのは、忍びないけど、お母さんに話かい?それとも内緒にするかい?」


「今すぐに、答えを出さないといけないのですか?少しだけ、待ってください。」


マティーと私を残して、会議室から、3人は出て行った。


「マーぷ、ケイト、お母さんに言った方いいのかな?教えない方がいいのかな?どちらがいんだろう?」


(余命宣告だよね。レスに知らせなかったら?そのまま普段の様に暮らす?

教えたくないのは、あたし、レスが苦しくても、大丈夫と必ず治るから、言って、励ますだけだもの。

でも、残りの人生の時間が判れば、死後の準備が出来る。

その時、レスの死を受け止めて、話さないといけない。辛いのはあたしだろう。レスの事を考えれば、言った方がいいのよね。)


「マーぷ、お母さんに、話す方を選ぶよ。でも、治す様に頑張ってもらうから。」


「大丈夫か?無理をするなよ。」とケイトの頭を撫でた。


その日の夕方、ロバート医師、ギル村長、マティー3人が、レスに今の病気の事を話した。


次の日からは、ケイトは、レスと一緒にいるようにした。


「お母さん、今日のご飯上手にできたよ。食べて」

「ケイト、少しでいいのよ。あまり入らないから、それにお薬がね。」


「お薬に文句言ったら、ダメなんだからね。」

と、やり取りを交わしていた。


三ヶ月だった。あっという間に亡くなってしまった。

でも、看病もできた。レスは、眠るようだった。


「お母さんが、言ったの、このペンダントは、ケイトが、貰うの、我が家のモチーフのペンダント。三つで一つのペンダントをね。そして、お墓は、ケイティの横。本当の家族3人で並ぶようにって・・・・

そしてね、お母さんが、『自分で決めた道を歩みなさい。』って言ったのが最後だった。」


(レスは、ケイトに気を使ったのだろう。普段はいつもと変わらな様に過ごし、最後を悟った時に、伝えてくれたのだから。

親孝行も感謝の言葉も何もかもが出来なかった、あたしは一体何やってんのよ。自分に嫌気がさしてくる。)

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