第3章 王都へ

第41話

レスが、亡くなり、一人になってしまった。

一週間が経ち、今は、三人で暮らした家に一人で住んでいる。


(式部として生きていた時も、一人だったわ、あの頃は、外見もだし、中身も残念だったと、今ならわかる、自分の独りよがりだったと思える。ただ違うのは、年齢よね。あの頃は、社会人だったもの。今は9歳だから・・・・畑はないし、何処かで雇ってもらうにしても、紹介が必要よね。)


トントン家のドアが叩かれる。


「ケイトいるか?」


「はい」ドアを開けると、ギル村長とマティーが立っていた。


「話があるんだ、中にはいるぞ。」とマティーが言って、二人が家の中に入ってきた。


テーブルに案内して、席にすわすと、ギル村長が口を開いた。


「ケイト、レスさんから亡くなる前に、頼まれていた事がある。レスさんは、君の事を心配していたんだ。」


「ギル村長、どこか仕事を紹介してもらって、働こうと思ってます。」


ケイトの言葉を聞いて、マティーが、口を挟んだ。

「レスさんは、僕にも、頼んできたよ。それはね、君の魔力の事だよ。」


ケイトは、魔力なしですよ。平民の子供なのですから。」言い切った。


「レスさんは、そう思って無かったようだけど。折角、魔力を持っているのだから、魔法学園に入って、それから、仕事を探して欲しいとね。僕に頼んだんだ。」


ケイトは、胸にかけている、我が家のモチーフのペンダントを強く握った。


(独りよがりだろう、意固地になっているのかもしれない。

でも、折角、魔力なしにして貰ったのに、魔法学園に行く必要はないわ。このまま、どこか紹介で働けたらいいのよ。)


「ケイト、マーぷが、紹介する所で、働くかい?」

先程のまでの口調が柔らかく諭すように、幼児を諭すように言った。


「紹介してもらえるの?魔力なしでもいいの?」

思わず、昔の口調で話してしまった。


「いいよ。ただね、レスさんは、魔力を持っているケイトの将来を心配して、魔法学園に入った方がいいと思っていた事は、忘れないようにね。」


「ギル村長、いいかな?僕が紹介しても。」


「俺の方は構いませんよ。レスさんが、ケイトの生活を心配していたんですから、それに、俺にもレスさんは、同じ事を言ってましたよ。ただ、ケイトは、魔力なしに拘るだろうとも言ってましたからね。」


仕事先は決まっていたのだろう。一週間後に村から離れて、バルフォアボール辺境伯の屋敷に向かった。


屋敷は広く、大勢の使用人がいた。

屋敷のホールに着き、侍女から、応接間に案内され通された。


「マーぷ、ケイトここで働くの?」


「そうだよ、そしてね、ケイトこれからは、マーぷと呼べるのは、屋敷の外で二人の時だけだよ、後は、マナーの本で勉強したよね。」


「はい、マティー様、覚えています。」


「宜しい。偶には、様子を見に来るからね。」ニヤリと笑った。


どこで、働くとか、何をするのかは、詳しく聞いていなかった。


あたし馬鹿だよね〜。いつ、どこで、いくらで働くのかを全く聞いてないんだもん。マティーを信用しすぎだね。

辺境伯様のお屋敷で働くのか〜、村では、領主様は人望が熱い人だから。大丈夫よね。それに、マティーのお友達だもの。)


辺境伯が応接間に入ってきた。


「マティー、久しぶり、この間の健康検診の結果以来か。

その子か。」


「アイク、そうだよ。ケイト、挨拶をしなさい。」


ケイトは、腰を掛けていた、ソファーから立ち上がり、「ケイトと言います。母の時はお世話になりました。マティー様から、こちらで、雇ってもらえると聞き来ました。お世話になります。」と言い、深く頭を下げた。


「お母さんの事は、残念だったね。マティーとギル村長からは、お父さんのけんも聞いたよ。君一人になって、色々と心細いだろうけど、マティーも、時々、顔を見せるだろうし、そのうちに、屋敷の使用人とも仲良くなれるだろう。頑張るんだよ。」


「はい、頑張ります。」


「マティー、一応、確認だが、ケイトは、魔力なしなのかい?」


「そうだよ、ほら、魔力検定の時に立ち合ってたからね。」ニヤリと口角が上がった。


「そうか。ケイト、君の仕事は、メイド見習いからだ、バーバラ侍従長から、習うようにね。」


侍従長が呼ばれ、今日から、メイド見習いと紹介をされた。


「ここの侍従長を任されているバーバラよ。何か分からない事があれば、聞いて頂戴ね。まずは、・・・・・」

屋敷の中を一通り案内され、メイド見習いにも一部屋貰えた。


案内が終わり、応接間に行くと、マティーは、アイザックとまだ話いをしていた。


「ご主人様、ケイトを案内終わりました。」

アイザックは、ケイトを見ながら、

「仕事頑張れそうかな?最初は大変だろうけど、慣れるまでだからね。頑張るように」と声を掛けてくれた。


「ケイト、大丈夫だよ。何かあったら、僕の所に連絡するんだぞ。」

ソファーから立ち上がったと思ったら、ケイトの前に来て、頭を撫でてくる。


「大丈夫です。頑張れそうです。」

小さな声で「マーぷ」とマティー以外に聞こえないように言った。

(マーぷ、大丈夫。子供じゃないんだから、心配しないで。)

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