第19話トレイル伯爵領

バチェラー・ロイ・トレイルは2年前から起きている異変に頭悩ませていた。


「なぜこんなに収穫が減ったのだ?

ドワーフからも鉱石の採れる洞窟に、強力な魔物が出て、鉱石の採取ができないと言って来て、魔物討伐依頼が殺到している」


いったい何が起こってるんだ…



トレイル伯爵領は、東に巨大山脈がありそれに沿うように、南北1200kmに広がる山岳領地だ。


主な資源は山林の材木、石材、鉱石類、洞窟族ドワーフが作る武器や道具で、唯一の農作物は、山岳地域で栽培されているタロト芋だった。


このタロト芋は栄養価が高く、バイスル王国の商人達の人気の作物で、高額の取引がされる、トレイル伯爵領の貴重な収入源となっている


領地は、ヴィレネト山脈に沿うように、南北に長い。

前世地球の南アメリカ大陸のチリと似ている。

山岳が多いため、各所に洞窟族ドワーフが集落を作り暮らし、いくつかのダンジョンも存在し、冒険者に人気の領地になっている。


ただ洞窟が多いため、盗賊達や、闇で生きる暗殺を生業にする、集団のアジトが集まる領地でもある。


当然領主のバチェラーは、そう言った者達とのつながりもあり、新参者の闇の組織は取り締まられ、バイスル王国管轄部署に報告送られる。


この為、古くより付き合いのある暗殺組織は、捕縛を免れ、バチェラーの暗躍するための組織になっていた。


そうバチェラーは、闇の組織と上手く向き合いながら、この特異な地形を利用し領地は、独特の発展を遂げ潤っていた。


それが2年前からおかしくなり始めたのだ。

タロト芋の大幅収穫量の減少に、魔物の増加、何が原因だ…

2年前と言えばたしか王族のパーティーで公爵家のガキに…

まさか!あれが原因だと?あり得ん!


☆・☆・☆


私は2年前王城でのパーティー会場で、落ち込む公爵家の嫡男ナルシスに声をかけた。

公爵家と繋がりを持つために、近づいたのだ。


「おやどうされたのですか?」


するとナルシスは、ベルモルト辺境伯家の子供に恥をかかされたと、文句をいいながら、手にしてるフォークで何度も肉を刺していた。


「チビがクソ!クソ!くそ!」

ザク!ザク!ザク!


私は、これはチャンスとばかりにナルシスの耳元でアドバイスを送った。


「ナルシス様、それならいい方法がございますが、お聞きになりますか?

ただしこの事は人に言わないと、約束していただきますが、よろしいですか?」


ナルシスは暫く考え頷く


「では、私の控え室に来ていただけますか?ここでは話せませんので」


「わかったどこだ!ついて行く」


バチェラーは、ナルシスを部屋に入れ、盗聴防止の魔道具を起動させ、話を始める


「ナルシス様、私には闇ギルドの組織に伝があります。

ナルシス様が、どうしてもその者をどうにかしたいのであれば、依頼としてお受けいたしますが、どうされますか?


ただし闇ギルドは、少々金額が高く、秘密は厳守していただきますが、それさえ了承していただければ、殺人から誘拐何でもいたします。どうされますか?」


ナルシスは、暫く考え込み話してくる


「依頼をする!相手はベルモルト辺境伯の小さい方の子供だ!

どんなに傷つついてもかまわん!

奴隷にするから生きて連れて来てほしい!

絶対他の者に手を出すな!

問題が大きくなるとまずい」


なるほど、ナルシスの怒りの元は、ベルモルト家の子供か、フフちょうどいい。


あそこの娘を、息子と結婚させれば、辺境伯爵領と強い繋がりができる。

この貸しで、あそこの娘と息子の顔合わせをお願いするか


「ナルシス様の依頼は、大変難しいですが何とかさせて頂きます。

ただ私からも、お願いがございます。


お父上にお願いして、私の息子ボドレルトと、ベルモルト辺境伯家の長女アイラ様と、引き合わせをお願いできないでしょうか?


ボドレルトは、アイラ様をいたく気に入りまして、できれば婚約したいともうしております。いかがでしょうか?」


ナルシスは驚いていた、貴族女性の欠片もない、粗暴な子供だとの噂の、アイラを、好きな子供もがいることに


「わかった、父上に申しておく!それで依頼の金は、いつ渡せばいいのだ?」


バチェラーは公爵家との繋がりを持つ機会を狙っていた。そしてチャンスが訪れこれを利用する事にした。


「それなんですが、公爵家の方にお伺いしますその時で結構です。

それでその時に、是非私をお父上に紹介していただければと。

困り果ててた、ナルシス様を助けたとか、理由をつけていただければ、よろしいかと。


前から公爵家と、お付き合いさせて頂ければと、思っておりましたので、是非よろしくお願いします。

上手く取り次いでいただければ、料金は通常の金額にさせて頂きますよ」


「わかった、父上に取り次いで貰えるように、上手く話をしておく、期待しててくれ」


ニヤリ


バカなガキだせ!フハハハ


これで上手くやれば、ベルモルト辺境伯家も手に入るフハハハ


辺境伯第一婦人は、頭脳明晰で陰から辺境伯家を支えてると言われてる。


その婦人は、病弱な嫡男を溺愛している。

その子が死ねば、婦人は息子のことを思いその力を失くすだろう。


そうなれば、残された娘を、我が息子が惚れさせ婚姻まで行けば、辺境伯を裏から好きにできる。


辺境伯の荒れた領地を、開拓し大きくしたのは、ミザリー婦人の、手腕だと言われてる。

力を失ったバトラーは、儂の策略で婦人と一緒に、眠りにつかせてやるわいフハハハ…


バチェラーは、二人の息子を呼び寄せる


「父上お呼びでしょうか?」

「父上ボドレルトです」


バチェラーは、入って来た二人の息子を見て確信する。

我が息子ながら、惚れ惚れする容姿と立派な体格じゃ!


長男は、剣師の上位スキルを持ち、バイスル王立学園では、3年連続剣技大会で優勝し、近衛第二師団長にも、模擬戦で勝つほど剣術が優れている。


次男ボドレルトは、戦略と補助魔法に秀でて、並みの騎士では近づく事も出来ないくらいじゃ、ほんとに優秀な息子たちよ


「父上!」

「父上!」


「おおそうじゃった、ボドレルト!ベルモルト辺境伯の娘と今会う機会を設けてもらっておる。

前から言ってた通り、上手くやるのだぞ!

コルトンは、ヴェルテイア公爵の娘だったか?

まだ儂の方では、何もできん、学園の方で何とかしなさい」


息子には、前もって儂の計画は言ってあるから、思った通りの反応じゃわい、特にボドレルトは、下衆なことでも考えてるのじゃろう笑みが不気味じゃ


「父上、前におっしゃってた事ですね、お任せください!あの子をやっと玩具に出来る機会がフフフ」


ボドレルト!お前は何を考えておる?おもちゃ?またこやつはもう…


「ボドレルトよく聞きなさい!あの娘は剣術が優秀じゃと聞く、騙す行為はいかんぞ!

あの家には、優秀な目と耳がおる!絶対やるな!

いいか、必ず惚れさせるのじゃ!お前の容姿と頭脳なら問題ないじゃろ!」


ボドレルトが、不気味な笑みを浮かべ前に出る


「私の魅力と、行動でアイラを惚れさせてみせますよ、玩具にするのは少し我慢しますフフフ」


しかし、我が息子ながら不気味じゃわい

うむーあやつは、やり過ぎと言う事がわかっておらん。

今回あまりやり過ぎると、さすがに王家に目をつけられるから、少し釘をさしておくか…


バチェラーは、別邸に行き私兵の闇部隊の者を呼びよせる


「影よいるか!」


音もなく現れる数名の男達、相変わらず不気味よのぉ


バチェラーは、男達に報酬の袋を投げ指示をする


「公爵家のガキの依頼は誘拐だが計画通り子供を殺せ!

いいかできれば婦人が見てる前でな!

それと娘は絶対傷つけずに逃がせ!」


陰の者が失敗を恐れる


「収穫祭には、領主バトラーも来るはずです!

あの者がいれば成功確率はかなり低くなります。

夫人も元Aランク冒険者、我々の犠牲もかなり多くなります。」


バチェラーは、バトラーが王都に呼び出されることを伝える


「収穫祭には、バトラーはおらん!

子供と夫人と護衛だけだ!」


影の者が計画を伝えてくる


「それならば問題ないです。計画は盗賊を使い、襲わせ護衛を分断します。

仕上げは、我々の部隊が、魔物を使い確実に仕留めます。」


まぁこやつらなら問題ないじゃろ


「任せる!いいか証拠は残すな!」


シュン

シュン


さてこれで儂は、結果を待つだけじゃ!

この領地の山岳の部は、奴らの隠れ家に丁度いいし、鉱石類も豊富、ドワーフの生産する武器も、バイスル王国で大人気じゃ


タロト芋も、高額で取引されておる。

これで息子が、ベルモルト辺境伯領の領主になれば、食糧問題も解決するフハハ


☆・☆・☆

あれからじゃ!おかしくなったのは、ベルモルト辺境伯領もおかしくなっていると・・ 

いったい2年前の、何が原因だったのだ…


何か対策をしないと、我が領地は領民がどんどん流出してしまう、そうなれば陛下から、貴族位は剥奪され、領地も没収になる、何とかせねば…


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