第21話エレミア王妃の過ちと怒り

☆・☆・☆


2年前レイがラタネ村の森で襲撃にあったことは、エレミア直属諜報組織の黒百合部隊が掴んでいた。


王妃エレミアはパーティーでレイを見つけてからは、重要保護対象として優秀な黒百合部隊から数名をつけていた。


しかしラタネ村の事件は、闇ギルドが関係し大規模な襲撃事件となり、辺境伯家の強力護衛を持ってしても、闇ギルドの計画された襲撃を防ぐ事はできなかった。


当然黒百合部隊も襲撃阻止に動いていたが、闇ギルド組織は何重にも襲撃が計画され盗賊を利用しての波状攻撃で護衛を分断する行動に出たのだった。


組織の一部は従魔術師を利用し辺境伯家の子供たちを襲わせた。

黒百合部隊は獣魔術師が魔物を召喚し襲わせたとき陰から魔物を殲滅していた。


しかし2重3重の襲撃に手が回らず、黒百合部隊が駆けつけた時は、一人の子供がボアに襲われ牙が腹に刺っていた。


子供はボアの目をナイフで刺し視界を奪う

目を突き刺され視界を失ったボアは、狂ったように走りだし、小さな子供と一緒に谷底に落ちて行った。

黒百合部隊は、対象の女児が守られた事で、落ちた子供は気に止めなかった。


黒百合部隊のカシアは状況を冷静に分析報告する


「エレミア王妃の保護対象辺境伯家の女児襲撃の件ですが、入念に準備され必要以上の波状攻撃、盗賊、使役魔物を使って実力者の引き離し、そして必要以上に一人の人物を狙う。


これは相当その人物に恨みを持つ者の犯行だと推測されます。


幸い女児は数々の襲撃から守られ犠牲になったのは、魔物に襲われる女児を寸前で飛び込んで助けた子供だけです。


一人の子供の勇気ある行動が、女児とその護衛を突飛ばして助け、本人はバーストボアの牙に串刺しにされ、魔物と一緒に谷底に落ちて行きました。」


エレミアは報告を聞き驚く、そんな勇気ある行動をとる子供がいるんだと


「冷静な分析ね、さすが私が見込んだだけあるわね、優秀な子は好きよカシア♪

しかし凄い勇気ある子供もいたのね。

その子供のおかげで監視対象の女の子は助かったのね」


カシアは顔を赤く染め王妃の質問に答える


「はい!エレミア王妃のおっしゃる辺境伯家の女児は一人しかおらず、その者は無事です」


え?女児は一人?

ちょっと待って!どういう事?

あの時のあの子の特長は確か小さくて銀髪だったと思うけど、落ちたのは誰れ?


「それで落ちたのは誰なの?助けられた女児の容姿は」


「はい!落ちた子供は辺境伯嫡男のレイ様と思われます。

母親のミザリー様が呆然としておられ、その後起こった事に気がつき慌てて自分も飛び降りようとする慌てぶりでしたから。

助けられた女児は赤髪で、身長もそれなりに大きかったと思います」


エレミアは一瞬きょとんとする


え?どういう事?女児は赤髪?

確かパーティー会場にいたのは、銀髪の女児と赤髪の女児、それじゃ落ちた男の子の容姿は?


「カシアその落ちた子供の容姿は確認できてるの?」


「はい!容姿は髪が銀髪で長く身体は小さかったように思います。

おそらくセレスティア様より小さいかと」


嘘でしょ!落ちたのが私が保護対象にしてた女の子…


エレミアは思わず叫んでしまう


「私はなんて過ちをしてしまったの!」


カシアもエレミアが叫んだ言葉を聞いて確信す。

保護対象はあの小さな男の子だったと…


エレミアはショックで項垂れる


セレスティアより小さい男の子…

銀髪で小さな女の子が・・

確かにパーティーに来てた…

あの子が男の子だったとは…


そう私は辺境伯家の女の子が二人いるから、小さい女児の子供をカシア達に保護対象に指定してた・・

襲撃された時は女児ではなく男の子の格好してた。

だからカシア達は女の子を保護対象に見てたという事か…


私はなんて過ちを・・


「なるほどそれでベルモルト辺境伯に何度も子供と一緒に来てほしいと、お願いしても断られてたのね」


まさか男の子だったなんて…

エレミアはそんな徹底した攻撃をする相手なら、残った者もかなりの被害がでたのではないかと思った



「それでその後どうなったの?」


「それが、私も落ちたのが対象者とは思わず生き残ってる女児が気になり、再び攻撃が始まるようなら介入するつもりでした。


ところが、魔物達は男の子が落ちた谷へ向かわせないように立ちふさがるだけで、一切襲って来ず、辺境伯一行も別のところから集まってくる魔物達が集まりだしたため一旦引き上げました。

その後魔物達も消え、盗賊達も姿を消しました。」


え?何もせず姿を消した?エレミアは盗賊達の謎めいた行動に驚く


「盗賊達も魔物も辺境伯家の残りの者に襲う事なく姿を消した?」


カシアは頷きあの時の状況を思い出しながら話す


「私も不思議に思いました。まるで狙ってたのが落ちた子供だったのではと思う行動でした。」



カシアはあの悔しい光景を思い出すと悔しさで拳に力が入る。

エレミア様の言葉をよく考えていたら、あの赤髪の子供は女児というには大き過ぎた。

しかし小さな子供は男の子の格好をしていたから、あの子が保護対象と思ってしまった。


「申し訳ございません!小さな男の子が保護対象とは思わず、ミザリー様も付いているからと安心し、襲って来た魔物の第一陣の殲滅をして、対象者の元に向かった時には・・ぐっ」


カシアが自分が悪いと責めている。

私がもっと正しく伝えていれば、あの子を救えたかも知れない…


「カシアごめんなさい… 私がもっと正確に伝えていれば、もう少し違った結果になってたかもしれないわ、だからそんなに自分を攻めちゃダメよ」


「ありがとうございます。エレミア様」


しかしあの可愛い子が死んだなんて・・


でもあの子は、魔力の色が確か7色で輝いていた貴重な子供・・

できれば生きていてほしい…


いずれにしても、あんな可愛い子供を襲撃するなんて許せないわね。

エレミアは黒百合部隊に、襲撃を計画した貴族の特定を指示し、森の谷底に落ちたレイの捜索を命じた。


☆・・・

☆・・

☆・


あれから数ヶ月がたち、王妃エレミアの元には数々の報告が寄せられるが、レイに関する報告は何も上がってこなかった。

そしてレイに恨みを持ち、闇ギルドに依頼した人物と関係者も特定した。


エレミアは、その人物を監視しつつレイが見つかるまで待っていた。


そんな時、ベルモルト辺境伯領のモルトンで、銀髪の少女のうわさが広まっていると、エレミアに情報が入りエレミアは聞き返す


「モルトンで銀髪の少女?男の子じゃなく?」


王妃直属諜報組織黒百合部隊のサルシャは、モルトンからの冒険者の情報だと伝える


「すみません王妃殿下、私も直接行って確認してないのです。

モルトンからの護衛で来てた、冒険者が話してるのを聞いたその特長が、銀髪の少女だったのです。

それが少し気になって、報告しました。」


エレミアは、それを聞き黒百合部隊から数名確認に行かせる事にした。


「もしかしたらあの子かも知れない…

お願いそうであって」


エレミアは優秀な部下数名を、モルトンに派遣する事にした。

モルトンには、あの子も言ってもらった方がいいわね


「カシア今から、優秀な部下数名連れてモルトンに向かってくれるかしら、あの子かも知れないの、あまり期待しすぎないようにね」


え?あの子?

まさか、谷底に落ちたあの子かも知れないって事か?


「は!すぐに向かいます!」



フフフあれ以来カシアも落ち込んでいたから、少し元気が出たかしら、私も少し希望が見えて元気が出たわ♪


さて陛下が、国内の食糧問題で、アドバイスがほしいっておしゃってたから、補佐官として、ダメ男達に渇でも入れてあげましょう。


だいたいアドバイスを求める時って、いつも悩んで、ろくに決定できない事が多いんだから、どうしてビシッ!と決断できないのかしら?


しまりのない、ダラダラ会議なら強めに喝を入れてあげるわフフフ





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る