第276話 賑やかな夕食
えらい目にあった……。
なんか、前にも似たようなことがあった気がするけど、毎度毎度回数を重ねる度に女性陣の圧が強くなっている気がする。
おかしいな……俺の妻は三人、まだ婚姻の儀を行っていないミラやちゃんと二人で話し合っていないウルギアを含めても五人の筈なのに、のしかかる圧はその倍くらいはある。
まず初めに妻たち三人からどうして目を離した隙にレヴィラと見つめ合うことになっていたのかの説明を求められ、グラファルトに関しては【審判の瞳】まで使用して、俺が嘘をついていないか確認していた。
おのれ、ウルギア……なんというスキルを。
妻たちからの詰問によって今日のお茶会での一連の流れを説明した俺は、今度は妻たち以外の家族からもお小言を頂戴した。
「あなたは顔が良いんだから、もうちょっと発言には気をつけなさい」
「藍様は自然と周囲の人間を虜にする魅力的なお方なのです。それが、御自分の意志とは無関係に起こっているという事実をお忘れなき様に」
「もぅ、ランくんが格好良くて、優しいのは知ってけどぉ……モテモテになるのはちょっと困るなぁ……」
あ、違うわ。
めちゃめちゃ褒められてる。
でも恥ずかしいからやめて……お説教とは別の意味で顔を上げられなくなるから!
……でもこの後ちゃんと叱られました。
そうして長々としたお説教を受け続けた事で、空には月が顔を出し完全に夜となってしまった。
やっと解放された後で、女性陣達の気分が変わる前に俺はキッチンルームへと籠る。
いつもは作り置きの料理を亜空間から出すんだけど、今日はちゃんと一から作る事にした……いや、視線がね? 長テーブルを囲む女性陣達からの”お前、今日は分かってるだろうな?”みたいな視線がね?
【家事の心得EX】の影響か料理、掃除、食材の目利き等の家事スキルが格段に上がり、例え作り置きの料理だとしても美味しい筈なんだけど、みんなは作り立てが良いらしい。
曰く、”目の前でちゃんと作ってくれているのが嬉しい”とか。
という訳で、今日はしっかりと作ります。
左腕だけでも作れる料理にするけど。
主食はパンとお米をお好みで、おかずは毎日お世話になっている暴れ牛をメインに使って煮物、焼き物、後は薄くスライスした暴れ牛に”浄化魔法”を使ってしゃぶしゃぶ用に。
最初は肉を薄く切った事でアーシェやグラファルトから反感を買ったが、ミラやライナ、柔らかい物が好きなロゼはしゃぶしゃぶの方が好きなので用意した。
サラダは地球産の物よりもフィエリティーゼ産の物を使う。
実は、リィシアが地球産の野菜の苗や種を植えて育ててくれていたのだ。たまにレヴィラも手伝ってくれていた様で、同じ種類の野菜なのにフィエリティーゼで作った野菜の方が艶があり味も良い。
これは、地球にはほとんど存在しない魔力が関係しているらしい。
豊富な魔力を蓄えた土や肥料から野菜が栄養を吸い取り美味しくなるのだとか。
その為、ほとんど切るだけになるサラダはフィエリティーゼで作った物を使う。
リィシアが大喜びだ。
後はデザートにパフェを。
これは流石に全てを一からとはいかないので、同じくリィシアが育てた果物を使い、作り置きのアイスやクッキーを使う。ここで新しく作るのは生クリームとチョコソースくらいかな?
チョコレートはフィオラが好きだから、フィオラの分はチョコレートサンデー。別の皿に果物を添えて置く。
そんなこんなで左腕だけでもたつきながら料理を作っていると、二階にある転移装置からフィオラとレヴィラが帰って来た。
「ただいま戻りました」
『おかえり(なさい)』
すっごい艶々とした肌をしたフィオラが明るい声で帰宅を知らせると、席に着いていた女性陣から迎えられる。俺もキッチンルームから声を掛けた。
「うぐぅっ……ひぐっ……うぅっ……」
『…………』
え、無視!?
フィオラの後方に居るボロボロのレヴィラは無視なんですか!?
慌ててキッチンルームから出ると、俺の姿を見たレヴィラが一直線に駆けて来た。
「うわーーん!! ごわがっだぁ……いづもよりもごわがっだよぉ……」
「おお……とりあえず傷は癒そうな?」
抱き着いて泣いているレヴィラの頭を左手で撫でながら、ミラとフィオラに教わった”回復魔法”を使いレヴィラの傷を癒す。その後で、ついでに汚れた体を”浄化魔法”を使って綺麗にした。
一応傷が残っていたり、汚れが無いか確認する為にレヴィラに離れて貰う……エプロンとレヴィラの顔にもう一度”浄化魔法”を使った。うん、鼻がね……。
こうして見ると、レヴィラの服装って……こう……。
普段は麻色のローブを纏っているから分かりずらいけど、へそ出しで胸の部分を隠す為の黒い肌着の上に革製の胸当てに、丈の短い茶色のズボンとシンプルな革のブーツ。うん……何と言うか肌色が多い気がする。
あんまり見すぎるのも失礼だと思うので、一通り傷がない事が確認出来た所で再度レヴィラの頭に左手を置いて撫でる事にした。
「お疲れ様。そっちも色々と大変だったみたいだな」
「……うん」
「とりあえず、料理は沢山作ったからいっぱい食べてくれ。お酒も用意してあるから、今日は泊っていくだろう?」
「…………うん、ありがと」
未だにマリーゴールドの瞳に涙を溢れさせているレヴィラに優しく声を掛けつつ、俺はレヴィラの背中に左手を置いて空いている席へと座らせる。
その際に既に席に着いていた女性陣から呆れた様な表情を向けられたけど気にしない……キニシナイ。
いや、流石にほっとけないって!!
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【作者からの一言】
今日は息抜き回です。
久々に料理をするシーンを書きたかった。
そして書いている途中で右腕を使えない事に気が付いた……慌てて品目の変更をしました。
【作者からのお願い】
ここまでお読みくださりありがとうございます!
作品のフォロー・★★★での評価など、まだの方は是非よろしくお願いします!
ご感想もお待ちしております!!
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