第234話 『精神世界』 青い光に導かれて





 二人との話もそこそこに、俺は目的地であるプレデターの元へ向かう為に意識を今居るこの魂の回廊へと集中させる。

 そうして頭の中で願うのは、プレデターが居る場所までの道を開く事。魂の回廊とは俺の魂の内部であり、元をただせば俺自身が生み出して来た空間ともいえる場所だ。

 だから、俺が行きたいと思った場所を強く念じれば――。


『お、道を開いたのか』


 俺の背後で石柱が引きずられる様な物音が鳴り響くと同時に、【漆黒の略奪者】が興味深そうに音が鳴っている方向へと視線を向けていた。

 しばらくすると音は鳴り止み、それに合わせて俺も後ろへと振り返る。その時にわざわざ俺とタイミングを合わせて振り返るウルギアの様子がちょっとおかしくて健気に思えたのは内緒だ。

 そうして振り返った先では黒い壁が二つに分かれ、別れた壁の間には青白く発光する2m四方の四角い床が何枚も奥へと続いて伸びていた。【漆黒の略奪者】の言葉を借りるなら、これがプレデターの所まで導いてくれる道なのだろう。


「【叡智の瞳】で知っていたから分かってはいたつもりだったけど、本当に簡単に回廊をいじれるんだな……」

『まぁ、ここはお前の魂の内部だから当然の事なんだけどな。道だけじゃなく、作れらた空間の一つ一つをいじる事も出来るが……だからと言って、あのガキが居る場所を変にいじくるんじゃねぇぞ? 下手にいじるとどんな影響があるか分からねぇ』

「分かってるよ。だからこそプレデターの所へ直接転移する訳ではなく、こうしてわざわざ道を作ったんだ」


 そう、本当であれば今すぐにでも転移してプレデター元へと向かいたかった。しかし、初めての場所で迂闊に転移する事はそれ相応の危険を伴う。加えて、今回の場合で言えば目的は第一目的は呪いをプレデターから分離して封印する事だ。

 俺が下手な行動に出た所為で、プレデターの体に悪影響となるのは避けたい。


「それじゃあ、先へ進むとしようか」

「はい」

『おう』

「……【漆黒の略奪者】、これからの事についてなんだが」

『わーってるよ。オレは入って直ぐにあのガキに渡していた管理者権限の全てを剥奪して、お前の持つ内封に封印されてりゃいいんだろ?』


 三人で青白く発光する通路へと進み始めて直ぐに俺が【漆黒の略奪者】へ声を掛けると、【漆黒の略奪者】は面倒そうにしながらそう吐き捨てた。

 相変わらずの口の悪さに、こいつは本当に俺の魂から生まれた存在なのかと疑ってしまう。


「ああ、そしてお前にはいざという時の為に待機してもらう予定だ。もし外の世界で何かあったら、その時はお前の力で誰も失わない様に手を貸して欲しい。”解放”については黒椿やファンカレア、それにミラやアーシェにも説明してあるから」

『別に構わねぇよ? ちゃんとあのガキが救えるのなら、問題はねぇが……オレが与えた管理者権限を失ったあのガキはいつ消えてもおかしくねぇ。それについてはどうするつもりだ?』


 わざわざ俺の前に立ち塞がり、【漆黒の略奪者】は真面目な顔をしてそう聞いて来た。そんな【漆黒の略奪者】の態度に後ろに控えていたウルギアが俺の前へ出ようとするが、俺はウルギアを手で制して【漆黒の略奪者】に答える。


「大丈夫だ。それについてもちゃんと考えてある。ひとまず――プレデターには”神様”になって貰う事にするよ」

『…………は?』


 俺の発言にその場で口を開き呆けた顔をした【漆黒の略奪者】。

 うん……俺と瓜二つの姿でそう言う顔をするのは止めて欲しいな……。


 そうして俺は、呆けたままの【漆黒の略奪者】に苦笑を浮かべながらも説明を始める。


「黒椿はカミールという女神を生み出したことがある。プレデターが消えてしまう原因である魔力の供給についても、”創世”の力を使って生み出した神格を使えば何とかなるみたいだ」

『そ、そんなことが出来るのか……』

「まあ、俺もそこまで詳しい訳じゃないんだけど、黒椿が言うには絶対に成功するって言ってたぞ? ウルギアのお墨付きも貰えたしな」


 そうして俺がウルギアへと視線を送ると、ウルギアは俺の隣まで歩いて来て話し始めた。


「神格はその能力の大小・優劣に関わらず、自身で神属性の魔力を生み出し宿主へと循環させる機能を持っています。それを利用すれば、膨大な魔力を必要とするプレデターなる存在が生き続ける事は可能です」

『そうか……あいつはちゃんと生き続けられるんだな』

「まあ、そうはいっても神格を生み出すのにも、それを定着させるのにも時間が掛かるみたいだから魂の回廊内では難しいだろう。だから、まずはプレデターの前に俺が姿を現して、本来の憑依対象である俺へ呪いの意識を向けさせる――」


 そうして俺は、【漆黒の略奪者】に説明をする。

 プレデターの体内から完全に呪いが分離したタイミングで外封を使って呪いを結界内へと封印する。その間に黒椿がプレデターへと神属性の魔力を少しづつ流して、プレデターの体内へと循環させていき、ある程度応急処置が終わればプレデターを黒椿に頼んで外まで連れて行ってもらう予定だった。


「――後は外で黒椿やファンカレアの力を使ってプレデターに神格を宿せば終わりだ。神格を宿した影響で何かしらの権能に目覚める可能性はあるらしいけど、命には代えられないからな」

『なるほどな……まあ、オレはあいつが無事でいられるんならそれでいいんだ』


 俺やウルギアの言葉を聞いてようやく納得してくれた【漆黒の略奪者】は、俺の前を開ける様に横に移動した。

 ああ、要は済んだからもう行って良いって事ね。


 そんな自分勝手な行動ばかりする【漆黒の略奪者】に呆れてしまうが、急いでいる事には変わりないので俺は溜息を吐いてから歩き始める事にした。














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 短くなってしまって申し訳ないです……。


 もうすぐGWですね!(私は違いますが……)

 皆様はお出かけしたりするのでしょうか?

 楽しいGWを過ごせることをお祈りしています。


 次回もお楽しみに!


             【作者からのお願い】


 ここまでお読みくださりありがとうございます!


 作品のフォロー・★★★での評価など、まだの方は是非よろしくお願いします!


 ご感想もお待ちしております!!


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