第107話 それを許可とは言いません

 ピンポーン。


 静かな部屋に鳴り響くインターホン。その音がとても煩わしく感じるのはなぜでしょうか。普段ほとんどならない音だからでしょうか。体にとてつもない疲労感を感じるからでしょうか。それとも、もう何もする気力がわかないからでしょうか。


 ピンポーン。ピンポーン。


 インターホンが絶えず鳴り響きます。僕はベッドに横になったまま、それを無視し続けました。


 …………


 …………


 ……ガチャリ。


 インターホンの音がようやく止んだかと思えば、次は玄関扉の開く音。


「……生きてるの?」


 そして、聞き慣れた声。


「…………」


「……部屋、入るわよ」


 数秒後、声の主が僕の前に姿を現しました。


「あんた、どうして学校休んだのよ」


 制服についているリボンは黄色。背は僕より少し低いくらい。黒髪短髪。鋭い目つき。いかにも強気といった様子。


「……先輩。不法侵入ですよ」


 そう告げながら、僕は、ベッドから体を起こします。


「ちゃんと許可取ったじゃない。『入るわよ』って」


「それを許可とは言いません」


「そうかしら」


 先輩は、とぼけたように首を傾げました。


 分かっているんだかいないんだか……。


「そんなことより、理由よ理由」


「……理由?」


「あんたが学校休んだ理由。今日、お昼ご飯持ってあんたのクラスに行ったら、あんたのクラスメイトに、『よく分からないけど休んでる』って言われたの。そりゃ、気にもなるわよ」


 そういえば、今日、僕は学校に休みの連絡を入れたのでしょうか。入れたような気もしますが、記憶が曖昧です。改めて、僕がどれだけ落ち込んでいるのかを認識させられました。

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